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彼女はボクに発情しない
第30章 交響曲 ”彼女はボクに発情しない”
☆☆☆
突然の私の登場に、陽太はびっくりして、本当に固まっていた。
人って、びっくりすると、こうなるんだな・・・。

あ、そうだ、そうだ。ここ半年、こうして日本に帰って、陽太に会ったら絶対しなきゃと思っていたことがあったんだ。

「陽太・・・目、閉じて・・・」

あんぐり口を開いたまま素直に目を閉じる、陽太。
ふふふ・・・相変わらず、素直で可愛いし・・・ちょろい。

じゃあ・・・いっちょ・・・。

私は大きく右手を振りかぶると、

ばっしーん!!!

思いっきり陽太のほっぺたを張り倒した。

「ぶへっ」っと変な声を上げて、陽太は尻餅をついた。

「いってー!!!!」

突然の理不尽な攻撃に、涙目でこっちを見る陽太。私が張った右頬が痛々しく赤い。

「な・・・何するんだよ!奏!!」

ふん!と私は鼻息を荒くし、腰に手を当ててそんな陽太を睥睨するように見る。
陽太の向こうでは、優子ちゃんが手のひらで目を覆っている。

「これで、おあいこ!」

大声で言ってやった。
へ?とバカみたいな顔をする。医学部受かっても、やっぱり陽太は、陽太だ。

「だーかーらー!2年前!私を騙したこと!!!これでおあいこだから!!」

バックからクリアファイルに挟んだ手紙をひらりと示した。
二重になった色紙の中から出てきた手紙、それは優子ちゃんの筆跡だった。
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