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彼女はボクに発情しない
第6章 雨音とキスの追走曲
奏は大丈夫だろうか?今日は付き添えなかった。
SOSが来なかったところを見ると、きっと学校には無事に行ったのだろう。
本当は、ボクが休むときは奏にも休んで欲しいが、そういうわけにもいかない。

外の景色を見ていると、何か嫌な予感がする。
ポツポツポツと窓を大粒の雨が打ち付け始める。降り出したようだ。

無事に、帰ってきてくれ!

だが、その願いは虚しいものだったようだ。スマートウォッチがブルッと震えた。画面を見ると一言、『HELP』の文字。

奏だ!

起き上がれるだろうか?
ボクは横たわったまま、体に力を入れてみる。手を2〜3度閉じたり開いたりし、握りしめる。

行ける。というか、行くしかない。

ガバっと起き上がると、手近にある服に着替え、性処理用品をひっつかんで階段を駆け下りる。

リビングから妹の風香が顔を出す。

「陽、どうしたの?どっかいくの?」
玄関で靴を履く。傘・・・一応二本持ってくか・・・。
「陽!」
無視されたと思ったのか、風香が苛立たしげに声を上げる。
すまんな、妹よ、

「ボクは、行かなきゃいけないんだ」

そのまま振り返りもせずに、ボクは玄関から飛び出した。

「何あれ?」
カッコつけちゃって。
あとに残された風香は、呆れたように言った。
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