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彼女はボクに発情しない
第8章 北風と太陽による諧謔曲
【Scherzo by the north wind and the sun】

「はい、そこまで!」
担任の佐伯先生が号令をかける。ボクはシャープペンシルを置いた。
とりあえず、選択問題は全部埋めた。・・・大丈夫かな?
ただいまをもって、期末試験最後の科目である化学が終わり、同時に地獄の期末試験も終了した。

今回も、奏の『合宿』のお陰で、多分、赤点はない・・・はず。

相変わらずのスパルタ教育であったが、とりあえず試験を乗り切れたのは奏のおかげであることには違いないので、お礼を言わなくては・・・。

筆記用具を鞄にしまっている奏に後ろから声をかける。
「終わったよ〜。奏様のお陰で、一応埋められたよ〜」
「そう・・・よかった」

いつもなら、振り返ってそれなりの表情で返事をしてくれるのだが、今日は振り返ってすらくれない。奏自身ができが悪かった?馬鹿な、それは地球が破滅しても、ありえないことだ。

「じゃあ、今日、急ぐから」
そう言うと、さっさと問題用紙などを鞄に詰め始める。本当にさっさと帰る気だ。
ちょ、ちょっと待って、ボクも帰るよ〜。

なんか様子が変だな。
そう言えば、『合宿』の後半辺りから奏の元気がなかった気がする。厳しさはいつも通りなのだが、なんというか・・・なんだろう?何かが違うような気がした。

うーん・・・首を傾げていると、ボンと後ろから長谷川がボクの背中を叩く。
こいつは、ボクと同じ位出来が悪い。赤点ギリギリ常習犯だ。

「陽太〜数学!数学がやばいって・・・」
「お・・・俺は歴史が壊滅した」
弦次もボクの机におでこをぶつけるようにうつぶす。

なんで、こいつらは揃いも揃ってボクに出来なかった報告をする?!

「高山くんは?補習とかになって、遊びに行けないとか、ないよね?」

いつの間にか、大槻さんが話に加わってくる。そ、それは保証の限りじゃないな・・・。
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