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彼女はボクに発情しない
第8章 北風と太陽による諧謔曲
☆☆☆
結局、今日は、一人で家に帰った。
いつもそうじゃないのかって?いや、そうなんだけど、いつもは、帰り道、さり気なく奏を視界に入れながら帰るのがボクの日常だ。
いつ、『発情』があってもいいように、近くにいるに越したことはないから。

じゃあ、並んで帰ればいいじゃん、って?
そうしたいのは山々だが、奏ほどの美人になると、並んで歩いているだけで噂になってしまう。いちいち否定するのも面倒なので、高校1年生、早々に並んで帰るのはやめた。そのかわり、偶然を装ってチラチラ視界に捉えつつ帰るようになったというわけだ。

色々言っているが、まあ、傍から見たら、ボクは美人の幼馴染を追いかけ回す単なるストーカーである。

否定はしないけどさ。好きだし。実際。

奏もボクがそうしているのを分かってるはずなので、あんなふうにボクを振り切ることはこれまで一度もなかった。なのに・・・。いったい、なぜ!?

家族で囲む夕食の席、食べながらではあるが、ボクの頭は昼間の奏のことでいっぱいだった。ぼんやりと箸を進める。
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