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背徳は蜜の味
第5章 人妻その五 ~デリバリーの男の子と~
「ただいま…」
製造業の八木沢昭吉は重い足取りで自宅に帰ってきた。
「あなた、お帰りなさい
お風呂にします?それとも食事を先に済ませますか?」
「風呂に入ってシャワーを浴びてくるよ
今日は大忙しでね、汗まみれになっちまったからね」
鞄をソファの上に置いて
チラッと食卓に目をやってみる。
今夜もまたどこかのお店のデリバリーなのだろう
まるで中華の定食のように様々な料理が並んでいた。
「あら、あなた、夕飯に何かご不満でも?」
「いや、そう言うわけではないんだけどね…
ほら、こう暑いとさ、冷たい素麺でもツルツルっと食べたいなあ…なんて思っただけさ」
「まあ!それならそうとおっしゃってくださればいいのに…
わかりました、明日は冷たい冷麺を注文しておくわ」
おいおい、素麺ぐらい茹でてくれよと
ゲンナリしながら脱衣室に向かい衣服を脱いでゆく。
洗面台に写る自分の裸体を眺めながら近頃はお腹の出っ張りが気になってきた。
「そりゃあ、腹も出るよなあ…
毎晩、高カロリーの店屋物なんだからさ」
自分に料理のできる才能があれば
帰宅して颯爽とエプロンを身に付けてキッチンに立つのにと思ってしまう。
「こんなに美味しそうな料理を見ても嬉しくなさそうだったわね…
キッチンに立って料理するぐらい、なんてことはないけれど、それをしちゃうとあの子に会えなくなるんですもの…」
秋子が頑(かたく)なに料理をせずにデリバリーを頼む理由…
それはデリバリーのバイトをしている子に恋心を抱いていたからに他ならなかった。