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天狐あやかし秘譚
第116章 疑心暗鬼(ぎしんあんき)
高森が言うには、神宝とは言え『鏡』という実在の制約を全く無視するわけがないというのだ。鏡は形を映しとるものである。つまり、未来を確定するにしても、心を改変するにしても、『その鏡に映された範囲のものに限られる』のではないかと想定されるわけだ。

「直径25センチの鏡の表面積はおおよそ450平方センチくらいです。その範囲に写し取ったものしか視えない、つまり、未来が確定するのもあくまでその範囲だけということになりますし、心を操れる人数も一度に100人とかは無理であり、せいぜい鏡に写し取れる人数・・・1人ないし2人だと思われます。」

肝心の能力発動の条件についてだが、私は最初『スクセたちのかざす鏡に映り込まなけばいいのでは?』と考えたのだが、それは明確に否定された。なぜなら、少なくとも沖津鏡によって私の未来を『確定』されたとき、鏡はまだうつ伏せに置かれていたからである。私は鏡に映る『前』に未来を確定されていたのだ。

なので、あれら神宝が能力を発動するのには、必ずしも対象を鏡に物理的に映す必要はないと結論付けられた。

『映り込まなければOK』なんて、そんな甘い力ではないということだ。おそらく近くによるだけで、下手したら遠見の力と合わせて、術者が念じるだけで任意の対象の未来を確定できる可能性すら捨てきれないのだ。

ただ、それでもなお『映る範囲』による制限があるというのは、覚えておくと何かの役に立つかもな・・・とは思った。

「引き続き、暦部門の協力を得ながら調査を進めるんやが・・・宝生前たちが捉えられたことで更に時間制限が厳しくなってしもうた」

土御門の視線が画面越しにダリに向かう。
椅子の背もたれにもたれた姿勢で会議に参加していたダリは、その視線に臆することなく見つめ返した。

「敵はダリはんを明確に狙っとる。何か罠があると考えるのが相当や。それでも・・・」
土御門が若干言い淀む。言い方を選んでいるようにも見えた。心配ではある、しかし、それを直接言葉にするのは、この2000年以上生きている大妖怪に対して失礼というものだという考えがあったのだろうと思う。

「人の子に、そこまで心配されるほど、我は弱くはない」
土御門が言葉を選び終える前に、ダリが言った。
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