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恋人岬には噂があった
第3章 第3話 最終章
 野上はそう言うと、前々から疑問に思っていることがあった。それを訊いた。
「矢野さん。ダンプカー同士がスライドするとき、必ずと言っていいほどみんな手を挙げますよね、知り合いだからですか?」
 野上の質問に、矢野は精悍な顔つきになった。
「あれは仁義なんだよ。ダンプ仁義だ。そうだな、同じ現場でルートが同じなら、順番は狂わさない。知らない者同士でも手を挙げる。それがダンプ乗りとしてうまくいくんだ。他県でも同じだと思うよ」
 野上はなるほどですねと言った。あれはダンプ仁義だったのだ、と納得できた。
 骨材置き場のほうから、タイヤショベルのエンジンのかかる音が聞こえて来た。骨材をダンプするエンジン音と砂利の音も聞こえる。間もなく最終便の運転手も事務所に現れるだろう。
 そのとき、皆さんお待たせしました、と沙織が麦茶を運んで来た。
 彼女から渡された麦茶を若い運転手は一口飲むと、やっぱり沙織ちゃんはうまいとダジャレを言った。が、気づいたように笑ったのは矢野だけだった。若い運転手はシュンとしている。野上はちょっと気の毒に思えた。一世一代のシャレだったかも知れないからだ。
 最終のダンプカーの運転手が事務所に上がって来た。
 沙織はお疲れさまと言って納品書を受け取ると、サインして、いつもと同じように受領書を渡した。そしてカウンターの上に、麦茶をコトリと置いた。
「はい、北村さん、冷たい麦茶ですよ」
「感激だなー。俺の名前言ってくれる。この麦茶すごくうまいです」
 北村がにこにこしてうまそうに飲んでいると、麦茶を手にして長いイスに腰かけている矢野が話しかけた。
「北村。無線で言ってたじゃないか、野上さんに訊くことあるんじゃないのか?」
 それには、北村は真顔になった。
「そうでした。野上さんは以前トレーラーに乗っていたんですよね。俺は社長から牽引を取れって言われてるんです。しかし、バックが難しくて合格しないんです。コツってありますか?」
「そうだな、バックのコツは、ハンドルを素早くグッと切って、素早く戻すことだね。免許の場合だと、道路に真っ直ぐに進入して、直角に右バックのときは、バックしながらハンドルを素早くグッと切るだけで、ヘッドとシャーシはかなり折れてる。だから、ハンドルを素早く戻す。トレーラーの軸は最後尾だから、最後尾のタイヤを路地に押し込んでいく感覚でいいよ。あと
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