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恋人岬には噂があった
第3章 第3話 最終章
はバックしながら、ハンドルの調整だけだよ。左バックとか縦列駐車のときも、やはり素早くハンドルを切って、素早く戻すんだけど、ヘッドの後ろの窓から後方を見る場合もある。とにかくコツは、素早くグッと切って素早く戻すことだね。北村君は、重量物も運ぶの?」
「はい。俺、独身だから、お前が乗れって社長が言うんですよ」
「じゃあ、フェリーに乗るときがあるかもしれない。フェリーだと、最後あたりにど真ん中に乗せてくれるときが多いんだ。乗り込むときは、天下を取った気分だぞ。だけど、重量配分で隅に誘導されることもあるんだ。誘導員が笛で誘導してくれる。ただ、一発で着けても、一度前進して、バックする。タイヤがねじれてるからね。一発で着けると、映画スターの気分だぞ」
 野上がそう言うと、北村は何かを考えるようにニンマリしている。映画スターの気分を描いているのかも知れない。野上は北村が合格すればいいなと思った。
 話し終えた二人を見て、さあ、俺たちはぼちぼち帰るとするか、と矢野は言った。
「沙織ちゃん、麦茶ごちそうさま。すごくうまかったよ。野上さん、お疲れさまでした。俺たちお先に失礼します。明日仕事があれば連絡ください」
「はい。そのときは連絡します」
「俺、次は合格する気がします。最後尾が軸で、とにかく素早くですね。ありがとうございました」
 野上と沙織はにこにこして全員を見送っていた。
 ダンプカーのエンジンがかかった。今度は到着順に、楓生コンを後にして行くのだ。事務所の前を通るときには、運転手たちはヤンキーホーンを短音で軽く鳴らして場内から出て行った。そんなダンプ仁義はもう何年も続いている。最後の鈴本タイヤの若い運転手も、ピッと鳴らして手を挙げて場内を後にして行った。
 峰川の堤の道を、隊列を組んで帰って行くダンプカーと、タイヤを積んだ鈴本タイヤのトラックが野上の頭に浮かんでいる。
(──今の時刻、堤の道は空いている。それもダンプ仁義なのだろう)
 事務所の窓辺に立って、プラントを眺めている野上はそう思った。
 午後四時二十分だった。
 コップを既に片づけた沙織は机に向かい、手もとに伝票類を置いて、野上には真似できない速さでパソコンに打ち込んでいた。
 タイヤショベルのエンジン音が静かになって止まった。河合は終わったようである。
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