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恋人岬には噂があった
第3章 第3話 最終章
 ダイニングの隅までいってメールを開くと、明日の夜も会いたいと書いてあった。返信すると、食事を作ってくれるということだった。待ち合わせは、六時以降に潮崎町の携帯ショップの駐車場だった。
 メールを終えて野上が振り返ったとき、花瓶に生けてある花が、増えているようにみえた。
「由香、かすみ草が増えてるみたいだけど、また貰ってきたのか? 店に置いとけば売れるんじゃないのか?」
「もう、前にも言ったじゃない。咲きすぎるとお客さんは買わなくなるのよ。持って帰っていいって店長さんが言ったんです! ねえ、かすみ草の花言葉知ってる?」
(かすみ草の花言葉? 何だろう──)
 野上は自分の椅子に腰かけて由香を見た。すると、私はバージンです! という花言葉が浮かんだ。だが、そんなことは娘に言えない。野上は箸を手にした。
「あのね、無邪気とか、清らかな心だよ。私と同じだね。で、明日の夜奈々さんとは?」
「それがね、明日は手料理をご馳走してくれるって言うんだよ。釣り道具の手入れもあるんだけど、断るのも悪いからさ」
「あっ、お父さんデレデレしてる。でも、それでいいんじゃない?」

 この日の夜、由香に反対されなくて良かったなと野上は思った。それに、アネモネの花言葉を訊こうかと思ったが、自分の勘に従いそれは訊かなかった。奈々が潮崎町に越して来てから、彼女は由香のバイト先のこの町にも訪れているように思えたからである。

     (六)
 翌日だった。天気予報通りに、昨夜からの土砂降りの雨である。プラントも場内も雨に煙っていた。
 作業服に着替えた野上と河合は、プラントの点検を始めた。倉庫の隣はシャッターが上がり、そこでは数人が手伝ってミキサー車のオイル交換を始めている。昨日届いたタイヤを組んでいるドライバーたちの姿もあった。
 十一時頃になって、野上は場内放送で事務所に呼ばれた。来週半ばに始まる、新たな工事の打ち合わせである。
 プラントは河合に任せて、野上は自分の身なりを確かめて事務所に上がっていった。ソファから立ち上がった玉川は、緊張した顔つきである。テーブルの隣には玉川を案内したばかりだろう、沙織が立っていた。
 野上が頷くと、沙織は席を外した。お茶を用意しにいくようである。
 玉川さんどうぞお掛けになってください、と野上は言って、自分もソファに腰をおろした。
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