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恋人岬には噂があった
第1章 第1話
時間を気にする様子もなく、奈々がポイントに関することを話し始めた。
このとき野上は上の空だった。奈々の眼差しや、セクシーに動く唇を見ていた。
(──いや、違う。空振りだと思ったが、確かに奈々は、はい、分かりましたと言った。以前教えた会社の所在地まで覚えていてくれた。よく喋るけど、バージンのくせに俺に気があるのか? 独身の俺を挑発しているのか? 俺にバージンを捧げてもいいということなのか?)
奈々の上目遣いと、唇のすき間は、男が欲しくてたまらないように、野上には見えた。
ベッドの上で仁王立ちになり、浴衣のすき間から亀頭の張った肉棒を覗かせ、横膝で座っている浴衣姿の目の前の女に変なことをおねだりしたとき、男の腰に両手をそえ、恥ずかしそうに浴衣のすき間を開けてゆく女の上目づかいと、いまにも舌先を伸ばして裏筋を舐めてきそうな唇のすき間にも似ていた。
「ところで奈々ちゃん、買い物の途中だけど、時間は大丈夫? ご両親は心配しない?」
野上が言うと、奈々は目を丸くして、はっと気づいた顔をした。
「あっ、偶然お見かけしたものですから、仕事のことまでつい話してしまって、ごめんなさい」
奈々は頭をちょこんと下げて、野上に顔をむけた。
「でも私は大丈夫。独りで暮らしているんです。この少し向こうですけどね」
「ということは、ショップに勤め始めてから、ということ?」
「…………」
片手を唇に近づけた奈々が、クスッと含み笑いを見せた。そして再び悪戯っぽく野上をにらんでいる。
(奈々と会うのは三度目なのに、なぜバージンを匂わせ、なぜ独り暮らしを伝え、なぜそんなふうに俺を見るんだ? オヤジ好きなのか? 俺をセックスの相手として考えているのか?)
疑念が浮かんでくると、灯台の光が横切る度に一言呟いていた、ひとつひとつの願い事がよみがえって来た。
今夜の願い事は清純な女との出会いだった。前回まではスタイルのいい女、バージンの女、独り暮らしの女、淫乱でMっ気のある女。それらが浮かんだとき、恋人岬での願い事が達成されつつある、と野上は思った。おそらく、スタイルのいい女までが序章で、バージンを匂わせたのは清純な女をアピールしたいからだろう。独り暮らしを伝えたのは、彼女の部屋でバージンを確かめろということなのか? そこまで考えたとき、曖昧だった疑念が消えた。
このとき野上は上の空だった。奈々の眼差しや、セクシーに動く唇を見ていた。
(──いや、違う。空振りだと思ったが、確かに奈々は、はい、分かりましたと言った。以前教えた会社の所在地まで覚えていてくれた。よく喋るけど、バージンのくせに俺に気があるのか? 独身の俺を挑発しているのか? 俺にバージンを捧げてもいいということなのか?)
奈々の上目遣いと、唇のすき間は、男が欲しくてたまらないように、野上には見えた。
ベッドの上で仁王立ちになり、浴衣のすき間から亀頭の張った肉棒を覗かせ、横膝で座っている浴衣姿の目の前の女に変なことをおねだりしたとき、男の腰に両手をそえ、恥ずかしそうに浴衣のすき間を開けてゆく女の上目づかいと、いまにも舌先を伸ばして裏筋を舐めてきそうな唇のすき間にも似ていた。
「ところで奈々ちゃん、買い物の途中だけど、時間は大丈夫? ご両親は心配しない?」
野上が言うと、奈々は目を丸くして、はっと気づいた顔をした。
「あっ、偶然お見かけしたものですから、仕事のことまでつい話してしまって、ごめんなさい」
奈々は頭をちょこんと下げて、野上に顔をむけた。
「でも私は大丈夫。独りで暮らしているんです。この少し向こうですけどね」
「ということは、ショップに勤め始めてから、ということ?」
「…………」
片手を唇に近づけた奈々が、クスッと含み笑いを見せた。そして再び悪戯っぽく野上をにらんでいる。
(奈々と会うのは三度目なのに、なぜバージンを匂わせ、なぜ独り暮らしを伝え、なぜそんなふうに俺を見るんだ? オヤジ好きなのか? 俺をセックスの相手として考えているのか?)
疑念が浮かんでくると、灯台の光が横切る度に一言呟いていた、ひとつひとつの願い事がよみがえって来た。
今夜の願い事は清純な女との出会いだった。前回まではスタイルのいい女、バージンの女、独り暮らしの女、淫乱でMっ気のある女。それらが浮かんだとき、恋人岬での願い事が達成されつつある、と野上は思った。おそらく、スタイルのいい女までが序章で、バージンを匂わせたのは清純な女をアピールしたいからだろう。独り暮らしを伝えたのは、彼女の部屋でバージンを確かめろということなのか? そこまで考えたとき、曖昧だった疑念が消えた。