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性に堕ちたアイドルの365日
第29章 十七年前 店長候補とアイドル志望のJK 8
 「なんで店長はワタシの味方っていうかアイドルになれとかいうの」きれい、可愛いどちらともいえる敦子の顔。黙ってれば冷たい印象の顔。身長は高くもなく低くもない。胸も小さい。秋葉乃のドストライクなのだ。年齢を除けば。秋葉乃はロリコンではない。
 「アイドルになる。そんな娘とはじめて知り合ったから」答えになってないと思った。
 「店長のコンビニで働く前に何個かアルバイトしたんだ。社会勉強で、他のコンビニもそうだしファミレスとかチェーンの焼肉屋とか。そこでいつも店長にセクハラされた」どんなことをされたなど訊く必要はない。面接に来た女子校生のアルバイトの志望動機が社会勉強。男なら我こそがとなったのだろう。「でも店長はちがったな」秋葉乃は店長研修中だ。店長と呼ばれることは正直うれしかった。なれるものならとはじめて思った。「店長だけだよ。売上管理するからレジ任せた。本棚の整理頼むっていうの、めちゃくちゃこき使われた」
 「アルバイトに指示をするのはあたりまえ」
 「そのあたりまえがなかったんだよね。カレシはいるの。敦子ちゃんのシフトは自分といつもいっしょにするからなんでもいって。バイト終わりにゴハン行こうか。そんなのばっかりだったんだ。変な客に絡まれてどうしよう。そう思ったら店長がいきなり客を蹴って警察に通報して相手が悪いみたいにして」
 「あれは相手が悪いだろ」
 「今日いっしょにいてよ」いつもいるみたいな感じで敦子が話を変えた。きちんと会話をするのは、はじめてだ。なのにふたりはホテルにいる。しかしおたがいここにいるのを窮屈には思っていない。その証拠だろう会話がぎこちなくはなっていない。
 「それは」いつまでとは訊けなかった。
 「ワタシはアイドルになりたい。カレシといるよりアイドルになりたいを優先する。もうほとんど決めてるんだけど」
 「カレシがなんか邪魔をしようとしてる」
 「そういうのはない。そんな人ではないから」敦子の安堵した表情。ストーカーに豹変するような男ではないのだろう。「でも」敦子が言葉を濁す。
 「でもなに」
 「アイドルにカレシがいたらダメ。わかってるから別れる。でもそうしたらひとりぼっちになるんだなこれが」敦子がおどけたが本気の言葉なんだろう。「つまり心の拠り所というか愚痴ったり甘えたり相談に乗ってくれる人で、たまにはちゃんと叱ってくれる人が欲しいの」
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