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コンビニバイトの男の子
第8章 密談
【3】
予定していた2週間後の金曜日の午後、仕事中の貴之のスマートフォンに悠希から約束通りメッセージが届いた。
《山田様:こんにちは》
《山田様:お仕事中にすみません》
万が一を考えて、悠希の登録名は当たり障りのない偽名に変更していた。
《山田様:今 星野さんの家の前です》
《山田様:今からインターホンを押します》
《山田様:いいでしょうか?》
(引き止めるなら、今しかない・・・)
立て続けに送られてきたメッセージの最後の問い掛けに、一瞬躊躇した。
(でも、もう進むしかない)
《星野貴之:よろしく頼む。終わったら、約束通り連絡を》
貴之はそう返信して、願望を実行に移した。
《山田様:わかりました》
悠希から承諾のメッセージを受け取った後、すぐにスマートフォンをオフラインに切り替えた。次のメッセージの受信で仕事に支障が出るかもしれないとの考えからだった。しかしふたりがどうなっているかが気になり、オンラインに切り替えようとしては踏み留まることを何度も繰り返して、結局ほとんど仕事が手に付かなかった。
定時で急いで会社を出ると、すぐ近くの喫茶店に飛び込むように入った。目立たない奥まったところの席を確保して適当にコーヒーを注文すると、スマートフォンをテーブルに置いてじっと見つめた。その姿を不審そうに見ながら店員がコーヒーを置いたが、そのことにも気付かなかった。
震える指先で、オンラインに切り替えた。アンテナピクトが表示されると同時にメッセージの受信が通知され、急いでアプリを開いた。受信を示す悠希からのメッセージを表示すると、コメントに目が釘付けになった。
《山田様:萩子さんがOKしてくれました》
《山田様:上手くできるようにがんばります》
貴之の心拍数が一気に上がり、躰中の血液が沸騰したかのように全身がカッと熱くなった。
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