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第34章 翔太とのデート

微かに、佐川の耳にも、実雅子の声が聞こえた。

「どうした？」

と、佐川が聞いた。

「迷惑ばかりかけてごめんね」

実雅子がハッキリと声に出して伝えた。

「迷惑？」

　　　　　何を言いたいか、
　　　　　わからないほど、
　　　　　俺はバカじゃない。
　　　　　でも、本人の口から
　　　　　言わせることに意味がある。
　　　　　自分言葉に呪縛されることは
　　　　　ママあることだ。
　　　　　これから、実雅子を
　　　　　思い通りにするには、
　　　　　必要だ・・・。
　　　　　俺に負い目を感じてくれた方が、
　　　　　何かとやりやすい。
　　　　　本心を言えば、
　　　　　迷惑どころか、
　　　　　旦那の承諾どころか、依頼を受けて
　　　　　こんないい女を抱けて、
　　　　　やりたい放題できて、
　　　　　旦那から100万円も貰えて、
　　　　　会社には出社せずに給料が貰えて、
　　　　　上手くいけば、
　　　　　さらにボーナスの話もあった。
　　　　　ま、こんなに美味しい話があるのか？
　　　　　一石三鳥という感じだった。

「わたしのせいで、ずっと、迷惑を掛けてきて、今回は、今回で、夫の代わりまで」

実雅子は真剣に話していた。

　　　　　どこまで、
　　　　　信用していいのか
　　　　　わからないけど、
　　　　　信用することが重要。
　　　　　元ホストだからとか、
　　　　　そういう偏見は
　　　　　やはり捨てるべきだわ。
　　　　　わたしが忘れていた
　　　　　初めて会った場所を
　　　　　彼は覚えていてくれた。

「わたしのせいで、いろいろ嫌な目にあったのに、嫌味の一つも言わず、苦情も言わないで、わたしは、そんなに迷惑をかけていたのに、初めて会った場所を忘れていたわ」

俯いて、謝る実雅子。

「いいんだ。別に。あいつらに何を言われても屁でもなかったから。というか、言われ続けたから、お前を忘れないでいられたのかもしれない」

佐川が運転しながら、チラッと実雅子を見た。車はトンネルを出て、料金所を通過していた。減速したタイミングで、実雅子の手を握った佐川。