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誰にも言えない、紗也香先生
第7章 日暮れのブランコ
土曜日の午後、

勇くんの二階の部屋。
レッスンの合間、小さな休憩のひととき。

テーブルの上には、空になった二つの皿。
ほんのり甘い香りが残る、ティラミスの余韻。
今週のテスト、点数がぐんと上がったご褒美だった。

午後の光の中で、私たちの影がそっと重なる。
私の背中には、彼の胸の温もり。
優しく包まれているような安心感。

「先生のおかげだよ」
耳元に降りてきた声。
その吐息は、微かにくすぐったくて、胸の奥が熱を帯びる。

ふと、後ろからそっと唇が重ねられた。
口づけは、ティラミスの余韻に続く、甘くとろけるような第二章。

「でも……口だけ、ね」

私がそう告げた瞬間、彼の鼓動が私の背に伝わった。
そして、彼の想いが形を成したものが、まるで夢の中で導かれるように私の唇に触れた。

その存在は、私をためらいなく受け入れようとする。
温もりと緊張が交差し、二人だけの時が静かに深まっていく。

テーブルの上、グラスに残った氷が、
秘めた熱に応えるように、カランと音を立てて溶けていった。
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