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誰にも言えない、紗也香先生
第7章 日暮れのブランコ
「……静かね」
リザの声が、夜の風に溶けるように響いた。

裸の私は、ラテックスブーツだけを履いたまま、
彼女のドレスの裾のすぐ後ろを歩いていた。
螺旋階段を抜けて、屋上に出ると、
眼下には、きらきらと宝石のような夜景が広がっていた。

「ここ、好きなの。世界が全部、遠くに感じるでしょう?」

私は小さく頷き、冷たいコンクリートの上に立ったまま、夜風に身を委ねた。
そのとき――

リザが何か布のようなものをくるくると指で回し、
ふいに空へ放った。

「えっ……何、今の……?」

白い布は、月に向かって、風に乗ってふわりと舞い上がり――
そのまま、夜の深みに消えた。

「……あ」

「しまったぁ~!」
突然リザが芝居がかった声をあげる。
「連絡先、書くの忘れた! あれ、拾った人が返せないじゃない」

私は一歩あとずさりながら、目を見開いた。
「ま、まさか……今の……私の……っ!?」

「そう、あなたがさっきまで穿いてた――」

「ちょ、ちょっとリザぁあああ!!」
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