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誰にも言えない、紗也香先生
第8章 審判不在
——その部屋には、夜の夢のような光が満ちていた。
天井から吊るされた低い照明が、琥珀色の柔らかな光を落とし、
壁際には黒いカーテン、そして部屋の中央に、黒いベッドがひとつ。

そのベッドの前、敷かれたベルベットのカーペットの上で、
私とリザは、跪いたまま向き合っている。
私はまだ教師のスーツ姿で、リザは知的なOLの服に身を包んでいた。

アリス(審判員)はランプのそばで静かに立ち、
「最初の勝負はキスです」
と、微笑みながら告げた。

「どちらがより深く、より甘く、相手の心を揺らせるか——
私が見届けます」

音もなく、ゆっくりとリザが身を寄せる。
そして、唇がふわりと触れ合った。

それはただのキスではなかった。
互いの内側を探るように、
まるで体ごと、心ごと、相手へと溶けてゆくような熱があった。

リザの舌が私を包み込み、甘く絡み合うその瞬間、
私は脚をふるふると震わせ、ひとつ甘い吐息をもらしてしまう。

「……サヤ先生、負けちゃった?」

リザの囁きとともに、アリスが静かに言った。
「勝者、リザ様」

その宣言と同時に、リザの指先が私のシャツのボタンへと伸びてくる。
ひとつ、またひとつ、外されていく。
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