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誰にも言えない、紗也香先生
第8章 審判不在
「……ふふっ、どっちが先に落とすかしらね?」

アリスの声が遠のいていく。
頭が真っ白。身体は繋がり、心は乱れて、
もう、我慢が……

カタンッ。

落ちた。

同時に。

口から、I字型の双頭が、ふたり同時に床に転がった。

「えっ、ええっ!? また、これ!? やだもう!こんなのもうっ、私、知らないっ!!」
慌てたアリスが赤い顔のまま、くるりと踵を返し――
すごい速さで部屋の奥へと消えた。

二人で顔を見合わせた、その瞬間。

「ピン――ポン――♪」
突然、PAシステムの音が鳴り、間の抜けた女性の声が震えながら流れ出す。

>「し……審判官の不在により……こ、これからの勝負は……ちゅ、中止……。
>えっと、参加者の皆様、お、お疲れ様でした……!」

聞き覚えのある声に、リザが先に吹き出す。

「……あの子、自分でアナウンス流してるのね」

「う、うん……絶対、部屋の隅っこで顔真っ赤にしてるよ……」

私たちは笑いが止まらず、肩を寄せ合って、そのまま崩れ落ちそうになった。

でも。

そのU字型の双頭はまだ、ふたりを深く繋げたまま。
そして、もう邪魔をする審判も、時間制限も、ルールもない。

リザはそっと、私の耳元に囁く。

「……じゃあ、サヤ。
今度はふたりきりの、本当の勝負――しよっか♡」

そして、夜は静かに深く――
ふたりの愛だけで、甘く、果てしなく、続いていく。
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