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誰にも言えない回顧録
第3章 28歳 大学職員~続編
視線の走り方が昨日と違うように感じて気付いた。
ジャケットを脱いでいた上半身はブラウス1枚。
ほんのり下着の色味とシルエットが透けて見えている。
彼の視線は、無意識にその輪郭を追ったのだ。

反応に蛮勇を振るい、前ボタンに指をかけた。
彼が慌てて中腰に立ち上がり制止する。
そんな...ね、そこまでしないで...

すぐにも求められる、と思い込んだ自分の了見が恥ずかしかった。
しゃにむに押し倒されて抱きすくめてくれたなら、まだ気が楽だったのに。
どうすればいいのか
なぜ私はここへ連れてこられたのか。

立ち尽くしたまま身の置き所を見失った私に、彼も立ち上がって近づいてきた。
表情は変わらず優しい。
出来ることは何でも、って言ってくれましたね?
救われた心持ちになって何度も頷く。

あなたを穢すつもりはありません
安心してください、身体には指一本触れません
その上で...僕のお願いを聞いてもらえますか?

もちろんです...
ようやく私も。
強張った表情を緩めることが出来た。


予め約束を交わした。
時間は今からチェックアウトまで。
17時までだが、必要なら私にシャワーを浴びる時間を取ってくれる。
その間。
彼のリクエストには必ず応えること。
彼に聞かれたことには全て正直に答えること。
ただし。
それらは全て私自身の意思に基づく行為であること。
途中でどうしても受け入れられなくなったり。
不快に感じたり。
嫌気が差したりしたら。
その時は直ちに私が申告してこの時間は終了とすること。
彼はそれに対して異存はないこと。

何をするというのだろう。
私を穢さず、指一本すら触れずに、何を?

いいですね、始めますよ
ではここに立ってください
壁面の全身鏡に向き合う位置へ促される。

今からしばらく、そのまま動かずに立っていてください
見ていてもいいし、恥ずかしければ目を瞑っていても...いいですね?
何が始まるのか。
否も応もなく頷いたところから。
その時間は始まった。

いつもの穏やかな微笑みを湛えた表情で彼が鏡と私の間に立ち、真正面から近づいてくる。
でもこれまで一度もなかった、密接するような距離感。
唇を奪われそうな近さからじっと見つめられる。
私の髪を、顔を。
耳を、うなじを。

何が始まったのか、ようやく理解した。
私は叫び出したいほどの興奮に飲み込まれ始めていた。
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