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誰にも言えない回顧録
第3章 28歳 大学職員~続編
指一本触れない、という言葉は本当だった。
彼はごく至近距離に身体を寄せ顔を近づけてはくるが、けっして接触させない。
少し我慢、ですよ
そんな言葉を呟きながら。
見つめられる。
さりげなく匂いを確かめられる。
触れられてもいないままに。
全身をくまなく暴かれる、そんな錯覚に陥る。

ふんわり伝わる彼の熱度。
全身からほのかに漂う不思議と好ましい男性の香り。

彼の顔が私の乳房の高さへ。
遮られて見えていなかった自身の表情が全身鏡に映り、私は慄然とした。
言い逃れようもないほど。
映った私の顔は蕩けきっている。

着衣そのまま、なのに。
いくら凝視しようとも何も見えないはずなのに。
だが。
彼の眼は剥き出しの素肌まで見透かしているかのようだ。

両手を上に上げて組むように言われる。
素直に従おうとすると。
最初に約束しましたね
嫌になったらすぐに言ってください
いつでも止める決まりにしていますよ
彼はそう言って、ことさら今「私が自身の意思に基づいて」行動しているのだと念押しする。

開いた脇にすぐさま彼の顔が近づき、胸いっぱいに息を吸い込む気配が伝わる。
自分でも気になることは多々ある体臭の源泉。
直に見られるよりもむしろ羞恥が込み上げる。

彼の顔が正面に回ってくる。
丹念に、まるで鼻先でなぞり立てるかのように乳房の輪郭に沿って移動する。
両手を上げた私は、いかにも無防備。
高まる鼓動で彼にも聞こえてしまうのではないかと思うほどに心拍が早打ってくる。

次第に彼の顔が腹部へ。
そして、下腹部へ。
鏡越しに彼の顔がまるでそこに直に潜り込むように見える。
思うまま声を上げたい。
せめて息を喘がせたい。
じっと受け止めているのが辛い。

すごく...いい匂いがしていますよ
羞恥を煽るように、わざと鼻を鳴らす彼。
あながちでたらめとも思えなかった。
分かっていた。
開けば膝が笑ってしまいそうで、両腿をきつく閉じて踏ん張っていた。
その奥で。
とどめようもない熱が零れ始めているのを、私は自覚していた。

窓際のテーブルへ。
促されて、私はよろけそうになりながら辿り着き、素直に両手を突いた。
自然と上半身が沈み込み、お尻を突き出す姿勢になった。

背後でしゃがみ込んだ彼が、お尻に顔を近づけている。
本当に、着衣の外にまで私の匂いが漂っていたなら。
立っている脚が震え始めた。
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