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幸せのカタチ
第1章 プロローグ

愉しい時間はあっという間に過ぎてゆく。
倫也たちが帰る支度をしていた時だ。
私は倫也に自分の携帯の番号とメールアドレスを書いて渡そうと思っていた。
ママが倫也たちと話している間に素早くそれをメモ紙に書いて行く。
今から思えば倫也とはお互い一目惚れだったのかも知れない。
倫也からキスをされた時、いや、初めて倫也の顔を見た時から好きになっていたのだと思う。
それは、倫也も同じだったのだろう。
スナックのドアの前までママと一緒に三人を見送ろうとした時だ。
私はママに知られない様に倫也の手にメモ紙を押し込んだ。
それを待っていたかのように倫也はそのメモ紙を握りしめていた。
「じゃ、神田さん、また来て下さいね。お待ちしてますから…」
「じゃ、また来るから…」
そう言うと倫也たちはタクシーに乗り込みスナックを後にしたのだ。
ママと一緒にタクシーを見送った。
タクシーのテールランプが見えなくなるまで私はそれを見ていたのだ。
ママがお店のドアを開けて入って行くときに“チリン”と鈴の音がしたのを覚えている。
時刻はすでに深夜12時を回っていた。
ママが私にこう言う。
「未来ちゃん、今日はもう上がってもいいわよ…お疲れ様…」
私はママから帰りのタクシー代を貰いタクシーを呼んだ。
タクシーに乗り込むと倫也の事を考えていた。
果たして連絡は来るだろうか。
そんな事を考えながら車窓から闇夜に浮かぶ街の灯りを眺めていた。

