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真昼の幽霊
第4章 デート

「今度はタローの好きなモノに乗ろうよ」
「あれ」
彼は、すぐさま指をさす。そこには大きな観覧車があった。
目的地に近づくと待機列には大勢の家族連れやカップルがいる。
その横を進む彼の背中に、茂みで聞こえた係員たちの会話の様な言葉がひそひそと投げかけられていた。きっとタローの耳にも届いているだろう。
なんだか申し訳なくて、繋がれた手を手放す。とっさに振り返った彼が不思議そうに首をかしげて見つめているなか、手を叩いてやる。
――パチ!パチ!
スピーカーから流れている軽快な音楽に合わせて大きくラップ音を鳴らす、すると並んでいた子供たちが釣られて手を叩き歌い始めた。
もう陰口が気にならないほどの音量だった。
一際、賑やかになった列の中心で、彼は静かに微笑んでいた。タローはそれを入場音のように颯爽と歩いていき、観覧車の丸いゴンドラに入り込んだ。
「録音すればよかった!さすが真昼の幽霊だね」
「ま、まぁね」
本当は驚かしてやりたかったのだが、結果オーライとしておこう。
「あーぁ。俺の方がますます好きになっちゃうな」
向いではなく隣に座って繋がれた手を労うように撫でてくるタローをちらりと見る。はにかんで、うっとりしている。軽く寄りかかってきて、髪をひと束とり、くるくると遊び始めている。その視線に耐えられず窓の向こうをみて話題をそらす。

