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真昼の幽霊
第4章 デート

ゴンドラから見下ろす町並みは自分が浮かんで眺めている時よりも新鮮だ。いつもの坂はどこらへんだろうか。探していると白くてやや大きい建物に目を引かれる。
「大学病院だ!懐かしい」
「懐かしい?」
「……あれ、なんでだろ」
無意識に飛び出た言葉に自分でも驚く。そういえば名前も、死因も、分からないのだ。しばし考え込んでいると急に目の前が暗くなる。どうやらタローの手によって目隠しされているらしい。
「はーい。余計なこと考えるなら見せません」
「わ、ゴンドラ揺らさないでよ!!」
塞がれているせいで揺れが酷く感じて、タローにしがみつく。バカップルのような戯れがいっそう気恥ずかしい。
その時、頭上で彼の笑い声を遮るように何か音が鳴った。どきりとする。
「タローが揺らすから!まさか警報じゃ」
「違う違う」
騒がしい時間は一つのアラームであっけなく終わりを告げた。タローはスマホを確認するとため息をひとつ、つむじに落とした。彼はため息を払うように私の頭を撫でて残念そうに囁く。
「ごめんね。寄らなきゃいけない所があるから、今日はここまで」
「いや、その……連れてきてもらっただけでも十分だよ!ありがとタロー」
「今度は泊りにしよ。夜もたくさん遊べるよ」
「……」
夜に、と言うところに含みを感じる。すりすりと指の間をなでる彼の手の甲をつねってやった。

