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真昼の幽霊
第5章 九条家

 玄関までの短い廊下を歩く彼の後ろをついていく。
 あの少し長い前髪は横に流され撫で付けられている。革靴に足を通しかっちりとスーツを着て、腕時計をつけ直すタローは別人のように見えた。なのにネクタイが曲がっており、憂いを帯びた顔にどこか幼さを漂わせている。

「……あと2年したら毎日着るのか~」
「じゃー今は大2?ネクタイ曲がってるよ」
「そー。ね、ゆーちゃん直して」

 彼が私の両手首を掴んでネクタイのところまでつれていく。

「へへ。いいなコレ」

 両親指で手首の内側をくすぐって口元を緩ませ笑っている彼は、いっそう子供っぽい。おままごとをしているようだ。離してくれる気配は微塵もないので、しかたなくネクタイを一度ほどいてやる。

「できた」
「ありがと」

 乗せられてしまったが、案外キレイに結び直せて小さな達成感に口の端が上がってしまう。ふと顔をあげれば、タローが吐息混じりにうっそり笑っている。さっきとは打って変わって大人の男の顔みたいだった。玄関のドアに寄りかかっていたタローの顔がぐっと近づく。

「帰ってきたらさ」

 おままごとが恋人ごっこに変わる。その瞬間。

――ドン!ドン!

 扉を叩く音に驚いて、不覚にも人魂になってしまった。タローは深くため息をついている。なんだか観覧車での出来事を思い出してしまう。

「こうたろう、いるんだろう」

 どうやら外にいるのは男性のようだ。再び名前を呼ぶ声がする。

――……こうたろう?

 そう呼ばれた瞬間にタローは大きく舌打ちしながらもドアノブに手をかけて開いた。彼のうなじへ張り付くように隠れて様子を伺うと、タローに良く似た男が立っていた。
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