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真昼の幽霊
第5章 九条家
 
 切り揃えられた植え込み近くにしゃがむタローと少年の頭を上から眺める。

「僕は九条良太。よろしくね」

 少年はまっすぐこちらを見上げながら、手を差し出している。こちらも釣られて手を伸ばすが空を切るだけだった。

「……あ」
「ちぇ。やっぱり僕は触れないのか」
「こら」

 不満げな少年、良太をタローが手で制す。

「だいたい兄ちゃんがいなくなって、コッチ大変なんだよ!春さんも入院しちゃったし」
「春さんが……?」

 タローは口を尖らせ捲くし立てる少年の頭を誤魔化すように撫でている。その間に少年はキッズ携帯をいじっていた。打ち込まれた文字は画面が小さくて見えない。

――ピヨピヨ

 しばらくして、可愛らしい電子音が鳴った。少年が首からぶら下げているキッズ携帯からだ。それと同時に。

「おーい!どこにいるんだ。幸太郎!」

 茂みの向うで少年を呼ぶ声がする。先ほど運転してくれたタローの父親らしき人が探し回っているようだ。

「良太め。チクったな」
「ほら、父さんが探してるよ。お姉ちゃんと僕はしばらくここにいるからさ」
「……はぁ。ごめん、ゆーちゃん。迎えにくるから」
「……うん」

 タローが私の手をしっかりと握り込む。さっきとは違い、すり抜けないのが変な感じだった。そのやり取りを見ている少年がニコニコと言うよりニヤニヤしてる。

「いたっ」

 タローは握っていた手を離すと手刀で少年の頭をチョップして、ノロノロと父親のもとへ向かっていく。
 母親と離れる子供のように何度か振り返る彼へ手を振る。

「タローだけか……」

 振っていた手をグーパーと動かして手のひらを見つめる。透けている手のひらの向うに手招きしている少年が見えた。近寄ると、そっと耳打ちをしてくる。

「幸太郎兄ちゃんはね。2回、死んだからだと思う」
「え?」
「だから、兄ちゃんのこと見張ってね。特にお風呂とかさ」

 発言の意味が分からず顔を離して横を向くと、人差し指を唇に当てて、いかにも秘密ですと言わんばかりのポーズをしていた。
 そのまま、なぜか鼻を何度か鳴らしている少年をじっと観察する。
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