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真昼の幽霊
第5章 九条家
「雨の匂いがする。あっちいこう!」
「待って!こんな所で走らないでよ!」

 突然、弾けるように駐車場から走り出した少年を追いかける。こんな時に掴めないのがもどかしい。あっと言う間に黒い人だかりをスルスルと抜けて会場へと入ってしまった。
 その際、少年に気づいた人々が次々と軽く頭を下げて挨拶するのを華麗にかわしていく。タローの時とはまるで違う反応だ。
 キビキビと会場の廊下を進む少年が扉を開ける。そこは小さな個室、休憩スペースだった。

「式自体に出る必要ないからさ。みんな見えてる様で見てない。僕らも幽霊と同じだよ」

 やれやれ、と子供らしからぬ物言いで悪態をついている少年がソファに腰掛け、テーブルに置いてあるチョコレートを口に放り込んでいる。もういくつもお菓子の包み紙が広げられ、携帯ゲーム機が乱雑に置かれているのを見るに、どうやら少年も退屈しているようだ。

「兄ちゃんとさ~、どこで出会ったの?いつから一緒にいるの?」

 恋バナのような問いかけに笑ってしまう。彼の本名すら知らない関係なのに。いっそ教えて欲しいくらいだ。

「あのさ、九条家の亡霊ってなに?」
「え……!……それは……」

 今まで饒舌に喋っていた少年が言い淀み、食べ終わったチョコの包み紙を指先でいじっている。が、閉ざされた口がタローと別れる前と同じようにニヤニヤし始めた。

「安心してよ!お姉ちゃんのライバルじゃないからさ」

 一体、どう言う解釈をしたのか。何だかとんでもない誤解をしている気がする。

「きっと今の兄ちゃんなら答えてくれるよ!」

 なぜかアドバイスをされ、はぐらかされてしまった。回答した少年は妙に満足げに微笑み頷いている。

「あ!ほら、見て!やっぱり雨が降ってきた」

 少年が窓を指差す。ぽつり、ぽつり、と雨粒がガラスに引っ付き尾を引くように垂れ落ちていった。
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