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ぬれて、あふれて、きょうもまた  ~気づかされた悦びに溺れ~
第1章 月に一度の逢瀬で
 ホテルは都心を少し離れた大森にあった。
ビジネスホテルとは謳われていたが、日中のカップルユースを見込んだ瀟洒で目立たないホテルである。

 一見すると普通のホテルだし、遮音への配慮がされているから選んでいるのだと智之からそれとなく理由を教わって、優美は少し恥ずかしかった。

 取り立てて美人というわけではないものの、凛として落ち着いた印象が素敵だという評判を社内外から彼女自身も聞かされていたが、抱かれているときには全く違う可愛さがたまらないと智之にいつも言われるのである。
 智之に抱かれて絶頂を迎えた時の声の大きさに自分では気づいていないのかもしれないと思ったし、他人には言えない二面性があることは優美自身が自分でもよくわかっていた。


 シャワーを終えてバスローブに身を包んだ優美は部屋へ戻ると、上半身裸のまま窓の下の路地を立って見下ろしていた智之にうしろから抱きついて肩に顔を載せながら訊ねた。

「何見てるの?」
「いや、ただ眺めているだけだよ」

 土曜日の昼下がりの都会の路地は静かである。
 一緒に外を見たままの姿勢で智之の腕が優美の頭を越えて肩を抱き、そのままバスローブの上から胸を包んでくると、彼女の口から思わず「あん…」と小さな声が洩れた。
 振り向きざま今度は智之がうしろから優美を抱きしめ、肩に顔を載せてささやく。

「ゆみ… 逢いたかった…」
「わたしも…」

 ちょうど掌に収まる両方の胸がゆっくりと愛撫される。

「あん… ああ…」

 彼のうしろ首へ手を回して引き寄せながら、背中にあたる固いものを感じた優美のもう一方の手が背中へ伸びてそれを握りしめる。
 掌の中でぴくんと反応したのがわかって優美の口から洩れる声がひときわ大きくなる。

「あっ… あああ…」
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