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雨夜の灯(あまよのあかり)ー再会から始まる恋
第8章 「触れた指先に灯るもの」
 夜が静かに落ちていた。
 環の部屋には、スタンドライトの淡い光だけが灯っている。

 ハルは籠の中で眠り、まるで何もかもを許しているかのように小さな寝息をたてている。

 ふたりは、カーテンの前の小さなソファで、毛布にくるまりながら寄り添っていた。
 身体が触れ合う距離、けれど、まだ指先は遠慮がちだった。

「……ねえ、手、貸して」

 環の声に、澪は一瞬だけ目を見開いた。
 それでも、黙って手を差し出す。

 環の指が、その手にそっと重なった。

 指先が触れ合ったとたん、全身が小さく震えた。
 それは恐怖じゃなかった。ただ、あまりにも久しぶりの「ぬくもり」だった。

「手、冷たいね」

「うん……ずっと、こうだったから」

 環は澪の指を包むように握り込む。
 指の一本一本を確かめるように、ゆっくりと触れていく。

 指の節、手のひらの柔らかさ。
 それを確かめるように撫でるたび、澪の心が少しずつ、緩んでいった。

「澪……好きだよ」

 その言葉は、もう何も期待しない声ではなかった。
 目の前の澪を、過去も現在も抱きしめようとする声音だった。

 澪は小さく息をのむと、ほんの少しだけ環に身を預けた。
 肩と肩が触れる。髪が混じる。心音が混ざる。

「わたし……あなたといると、なにかが、戻ってくる気がする。
 失くしたままだと思ってた、わたし自身が……」

 環はその言葉を抱きしめるように、澪の背に腕をまわした。
 それは求めるというより、包むような抱擁だった。

 しばらく、ふたりは何も言わなかった。
 ただ静かに、肌と心で互いのぬくもりを確かめていた。

 手のひらに触れた灯りのような温度が、
 澪の心に、確かに小さな火を灯していった。
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