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雨夜の灯(あまよのあかり)ー再会から始まる恋
第4章 「氷のひとひら」

喫茶店の窓辺に、午後の日差しが斜めに差し込んでいた。
アイスコーヒーのグラスに水滴がつき、その雫がテーブルを濡らしていく。
澪は、黙っていた。
環もまた、しばらく口を開かなかった。
ふたりは今、向かい合っていた。
同じテーブルで、同じ午後を共有している。それだけで、どこか世界が静かに変わっている気がした。
「……澪」
環が名前を呼ぶ。もう、その音に澪は強く反応しなくなっていた。
まだ怖い。けれど、声を聴いていたいとも思っていた。
「ねぇ、どうしてって思ってるよね。あたしが、あんなことしてた理由」
澪は、かすかに頷いた。手元のカップから湯気が立ち上り、それに紛れて、心も少しだけほどける。
「自分でも、よくわからなかった。ただ……怖かったのかも。あなたのことが」
澪の目が、初めて環を見る。
「あなたは、静かで、きれいで、いつも一人だった。孤独なのに……どこか、誇りみたいなものを持ってた。わたし、そういうのに弱くて……ね。嫉妬っていうのかな、あれは。誰より自分が醜く思えてたのに、止められなかった」
氷が溶けるように、環の声も、少しずつ透明になっていった。
アイスコーヒーのグラスに水滴がつき、その雫がテーブルを濡らしていく。
澪は、黙っていた。
環もまた、しばらく口を開かなかった。
ふたりは今、向かい合っていた。
同じテーブルで、同じ午後を共有している。それだけで、どこか世界が静かに変わっている気がした。
「……澪」
環が名前を呼ぶ。もう、その音に澪は強く反応しなくなっていた。
まだ怖い。けれど、声を聴いていたいとも思っていた。
「ねぇ、どうしてって思ってるよね。あたしが、あんなことしてた理由」
澪は、かすかに頷いた。手元のカップから湯気が立ち上り、それに紛れて、心も少しだけほどける。
「自分でも、よくわからなかった。ただ……怖かったのかも。あなたのことが」
澪の目が、初めて環を見る。
「あなたは、静かで、きれいで、いつも一人だった。孤独なのに……どこか、誇りみたいなものを持ってた。わたし、そういうのに弱くて……ね。嫉妬っていうのかな、あれは。誰より自分が醜く思えてたのに、止められなかった」
氷が溶けるように、環の声も、少しずつ透明になっていった。

