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雨夜の灯(あまよのあかり)ー再会から始まる恋
第4章 「氷のひとひら」

「謝りたくても、できなかった。だって私、あの頃の自分を直視するのが怖かったから。今になってやっと、会いに行けたの。ほんとに……遅すぎたけど」
澪は、言葉を探していた。
心がざらざらして、簡単に「許す」とは言えなかった。けれど――
ふと、カップの横に置かれた紙ナプキンに、小さな影が落ちた。
ゆき、だった。椅子の下から顔を出し、澪の膝に鼻先をすり寄せてくる。
その温もりが、澪の唇をほどいた。
「……ごめんも、いらない。あなたの顔を見ると……思い出すから」
環は頷いた。それは拒絶ではなく、澪なりの答えだった。
それでいい、と思った。
窓の外で風が揺れた。
テーブルの氷がカランと鳴る。
「……でも、ゆきは……あの日、あなたに見つけてもらえて、幸せだったと思う」
その言葉に、環は目を伏せた。
その横顔を、澪は初めて「痛みを知っている人間」として見た。
その瞬間だった。
環が、席を立ち、澪の前に立つ。
そして――ふいに身を屈め、澪の額に唇を落とした。
「ありがとう、澪」
その声は、風の中でほどけていった。
澪の中で、凍っていたひとひらが、音を立てて溶けた。
澪は、言葉を探していた。
心がざらざらして、簡単に「許す」とは言えなかった。けれど――
ふと、カップの横に置かれた紙ナプキンに、小さな影が落ちた。
ゆき、だった。椅子の下から顔を出し、澪の膝に鼻先をすり寄せてくる。
その温もりが、澪の唇をほどいた。
「……ごめんも、いらない。あなたの顔を見ると……思い出すから」
環は頷いた。それは拒絶ではなく、澪なりの答えだった。
それでいい、と思った。
窓の外で風が揺れた。
テーブルの氷がカランと鳴る。
「……でも、ゆきは……あの日、あなたに見つけてもらえて、幸せだったと思う」
その言葉に、環は目を伏せた。
その横顔を、澪は初めて「痛みを知っている人間」として見た。
その瞬間だった。
環が、席を立ち、澪の前に立つ。
そして――ふいに身を屈め、澪の額に唇を落とした。
「ありがとう、澪」
その声は、風の中でほどけていった。
澪の中で、凍っていたひとひらが、音を立てて溶けた。

