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第30章 母親との再会

「陽菜ちゃんのお父さんは何やってるの？」


　突然、沙耶のお母さんに聞かれてドキッとした。


「あ……会社員です」

「あら、会社員なのね。どんなお仕事？」

「えっと……」

「もういいじゃん、そんな根掘り葉掘り聞かなくてもさー」

「別に根掘り葉掘り聞いたわけじゃないわよ。気にしないでね、陽菜ちゃん」

「陽菜、おばちゃんはお喋りだから気をつけてね」

「ちょっと、沙耶〜？」


　私は沙耶と沙耶のお母さんとのやりとりを見てクスッと笑った。


　いいな、お母さんと仲良くて……。
　もし私が普通だったら、こんなふうにお母さんと仲良くできたのかな……。


「さっ、もうすぐ開店だからお喋りはおしまい。そうそう、陽菜ちゃんは惣菜売り場の方、手伝ってくれる？」

「わかりました」


　私は沙耶と離れることに不安を抱えながらも惣菜売り場に行くと、白衣を着た女の人にお弁当を並べて欲しいと指示された。


　私は言われた通りに台の上にお弁当を並べていく。するとふと視線を感じて惣菜の作業場の方に振り返るけど、誰もこっちを見ていなかった。


　あれ……おかしいな。
　今、誰かが見ているような気がしたのに……。