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第30章 母親との再会

　お母さん……私のこと、そういうふうに思ってたんだ……。媚びるだなんてひどいよ……。しかも一ノ瀬さんにまでそんなこと言うなんて……。


　私は一ノ瀬さんをチラッと見た。でも一ノ瀬さんは私と目を合わせず、その場から去ってしまった。


「……っ……」


　もしかして、嫌われた？
　私のこと、幻滅したのかな……。


「今日も真人は来るのかしら」

「……えっ……」


　お母さんは初めて私と目を合わせた。


「ねえ、陽菜。真人に会わせてよ。真人と話がしたいの。いいでしょ？　私は真人の母親なんだから」


　そう言いながらお母さんは私に詰め寄ってくる。


「……っ……」


　お母さんの目が怖くて声が出ない。


「ねえ、陽菜」


　ビクッと私の身体が強張った。
　やっと名前を呼んでもらえたのに、全然嬉しくない。


「長坂さーん、マネージャーが呼んでますよ～」


　その時、お母さんは他のパートさんから呼ばれて私から去って行った。


「……っ……」


　心臓の鼓動が早い。手が震えてる。お母さんの声が耳から離れない。


　怖い……。お母さんが怖い……。