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母なる果実
第4章 Page.3 果実の動揺 前篇

「先に入って、シャワー浴びててね?」
そう言って、産まれたままの姿の彼を浴室に導いてシャワーを出す。湯温を確かめ、男の手に少し掛かるようにシャワーを向けると、女は一先ずその場を離れた。
浴室に一人残された男は相変わらず空虚に立ち尽くしていた。
ざあざあという音の中、視界はほんのり靄がかかったようだった。右手には熱い感触があり、なんとなく空気が温かい。何より、仄かに落ち着く匂いがする。
一体ここはどこだ――?
突然背後からがたりと音がした。そちらに目を向けると、なにやらぼやけた人影のようなものがなんとか見て取れる。白や赤が混じって見えたその影は、やがて全身が薄橙色へと変化していった。
答えがわからぬままじっとそれを見続けていると、突然扉が開いて、ぼやけていたものがいくらかくっきりとした姿で現れた。
「あれ、治った…?いや、まだかな」
視線が合ったからか、その人物は男の目の前に手をひらひらさせていた。この安心感のある声には聞き覚えがある――。
「はい、シャワー当てるよー」
はっきりとした答えが出そうで出ないまま、それは男の肌を熱く刺激するものを当ててきた。全身隈なく当てられて、身体がじわじわと火照ってくる。
「頭からかけるよー?」
心地よい声色でそんなことを言われたかと思った瞬間、突然目の前が滝のようになり、あまりの息苦しさに思わず頭をぶんぶんと振ってしまった。
「きゃっ!もう、犬じゃないんだから」
飛び散る水飛沫を手で庇いながら、その人物は呆れたように笑っていた。何が起ったがわからないまま茫然としていたが、やがてその姿に徐々に焦点が合ってくる――そして突然、頭の中で何かが弾けた。
そうだ、今目の前にいるのは紛れもなくあの人じゃないか!そう思った瞬間に視界がぶわっと開け、ようやく我に返った。
しかも、よく見たら彼女は何も纏っていない――いや、待てよ。見れば自分も同じ格好だ。
どうしてこうなった?確かスマホで連絡した所までは記憶があるが…見慣れた浴室だけれども、ここは自分の部屋か?それとも彼女の部屋?思考がはっきりしたにも関わらず、男の脳内はさらなる混乱を極めていた。
そう言って、産まれたままの姿の彼を浴室に導いてシャワーを出す。湯温を確かめ、男の手に少し掛かるようにシャワーを向けると、女は一先ずその場を離れた。
浴室に一人残された男は相変わらず空虚に立ち尽くしていた。
ざあざあという音の中、視界はほんのり靄がかかったようだった。右手には熱い感触があり、なんとなく空気が温かい。何より、仄かに落ち着く匂いがする。
一体ここはどこだ――?
突然背後からがたりと音がした。そちらに目を向けると、なにやらぼやけた人影のようなものがなんとか見て取れる。白や赤が混じって見えたその影は、やがて全身が薄橙色へと変化していった。
答えがわからぬままじっとそれを見続けていると、突然扉が開いて、ぼやけていたものがいくらかくっきりとした姿で現れた。
「あれ、治った…?いや、まだかな」
視線が合ったからか、その人物は男の目の前に手をひらひらさせていた。この安心感のある声には聞き覚えがある――。
「はい、シャワー当てるよー」
はっきりとした答えが出そうで出ないまま、それは男の肌を熱く刺激するものを当ててきた。全身隈なく当てられて、身体がじわじわと火照ってくる。
「頭からかけるよー?」
心地よい声色でそんなことを言われたかと思った瞬間、突然目の前が滝のようになり、あまりの息苦しさに思わず頭をぶんぶんと振ってしまった。
「きゃっ!もう、犬じゃないんだから」
飛び散る水飛沫を手で庇いながら、その人物は呆れたように笑っていた。何が起ったがわからないまま茫然としていたが、やがてその姿に徐々に焦点が合ってくる――そして突然、頭の中で何かが弾けた。
そうだ、今目の前にいるのは紛れもなくあの人じゃないか!そう思った瞬間に視界がぶわっと開け、ようやく我に返った。
しかも、よく見たら彼女は何も纏っていない――いや、待てよ。見れば自分も同じ格好だ。
どうしてこうなった?確かスマホで連絡した所までは記憶があるが…見慣れた浴室だけれども、ここは自分の部屋か?それとも彼女の部屋?思考がはっきりしたにも関わらず、男の脳内はさらなる混乱を極めていた。

