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母なる果実
第4章 Page.3 果実の動揺 前篇

「はい、じゃあ座ってくださーい」
とりあえず言われたとおりに椅子に座ってみる。女は脇のシャンプーを手に取ると、泡立てて男の髪を優しく洗い始めた。
「下向いて目瞑っててね?」
素直に従い視界を閉じると、頭皮の心地よい刺激と、わしゃわしゃという泡を掻き分ける音だけが響き渡った。シャンプーの香りに混じる彼女の匂いに、混乱していた思考がゆっくり解れていく。
「お痒いところありませんかー?」
まるで美容師のようだ。
「…ないです」
男が静かに答えると、彼女はぱっと顔を輝かせて、彼の耳元まで身を乗り出す。
「あれ、もしかして気がついた?」
「…う、うん、ごめん。俺、なんかおかしくなってたみたい」
「すごかったよ、声かけてもぎゅーしても、全然反応しないんだもん」
「ぎゅーしてくれたんだ?」
「うん、そしたらほんのちょっとだけ君もぎゅって返してくれたよ。覚えてないの?」
「ごめん…全然覚えてない」
「そっかそっか」
彼女の声は、話すうちに心なしか嬉しそうに弾んでいた。
とりあえず言われたとおりに椅子に座ってみる。女は脇のシャンプーを手に取ると、泡立てて男の髪を優しく洗い始めた。
「下向いて目瞑っててね?」
素直に従い視界を閉じると、頭皮の心地よい刺激と、わしゃわしゃという泡を掻き分ける音だけが響き渡った。シャンプーの香りに混じる彼女の匂いに、混乱していた思考がゆっくり解れていく。
「お痒いところありませんかー?」
まるで美容師のようだ。
「…ないです」
男が静かに答えると、彼女はぱっと顔を輝かせて、彼の耳元まで身を乗り出す。
「あれ、もしかして気がついた?」
「…う、うん、ごめん。俺、なんかおかしくなってたみたい」
「すごかったよ、声かけてもぎゅーしても、全然反応しないんだもん」
「ぎゅーしてくれたんだ?」
「うん、そしたらほんのちょっとだけ君もぎゅって返してくれたよ。覚えてないの?」
「ごめん…全然覚えてない」
「そっかそっか」
彼女の声は、話すうちに心なしか嬉しそうに弾んでいた。

