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母なる果実
第5章 Page.4 果実の動揺 後篇
浴室に、換気扇の低い音だけが響いていた。
 彼は気まずさをごまかすようにスポンジを持ち直す。すると、背を向けた彼女がぽつりと呟いた。
 
「そこ…洗って、いいよ」
 
 その声は小さく、どこか震えていた。
 
「え、でも…」
「大丈夫、だから…」
 
 彼女はそう言って、静かに脚を開いた。彼は少し迷った末、そっとスポンジを滑り込ませる。先ほどよりも広がった隙間に、泡を行き渡らせ丁寧に手を動かす。
 
 ときおり、彼女の腰がぴくりと震える。だが拒絶の気配はない。
 
――この人も、自分と同じように反応してしまうことがあるんだ。
 
 それはもしかしたら当たり前のことなのかもしれない。でも、なぜかとても嬉しいことだった。
 いつも癒してくれる彼女を、今度は自分が癒せるのかも。ふとそんなことを思いつく。
 もしかしたら拒絶されてしまう可能性もある。それでも、この後に彼女が自分の身に施してくれることを考えると――。そこまで思考を巡らせた男は意を決し、スポンジを置いた指先をそっと伸ばした。
 柔らかな感触に触れ、指先が突起に添えられた瞬間、彼女が小さく息を呑む。
 
「んっ…」
 
 指先から、わずかに震える彼女の反応を拾う。男は表情を窺おうとしたが、彼女は背を向けたまま何も言わなかった。
 代わりに、彼女はそっと腰を曲げ、双丘を彼のほうへと差し出していた。視界いっぱいの膨らみがさらに大きく主張し、男は圧倒されてしまう。
 それが彼女の答えだった。拒む理由などなく、むしろ真逆――それを察した男は、そっと突き出された膨らみに手を添え、もう片方の手で、指先を蜜の滴る泉の奥へと差し入れていった。
 
「あっ…あぁんっ…!」
 
 艶やかな声が弾ける。浴室に響いたその声に、彼の胸が高鳴った。
 彼女は咄嗟に口元を押さえるが、荒くなる吐息まで抑えることが出来ない。中を撫でる湿った音が女の耳にも響いていて、かあっと顔が火照っていくのを感じる。
 
「気持ちいい…?」
 
 いつもは彼女から投げかけてくれる言葉で、男はそっと問いかける。彼女は答えず、腰をくいくいと振って、指先に身を委ねてくる。その仕草が答えなのだと、男はそっと動きを深めた。
 
 彼女を喜ばせてあげたい――いまの男の望みはそれだけだった。
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