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僕の愛する未亡人
第15章 欲しがる未亡人 本間佳織④
「本間さん、本当……いやらしい」

「あ……ごめ……」

「何で謝るの、今日はあたしがしたんですよ」

もう一度佳織の体を抱き寄せて、耳元に何度もキスをする。

「はぁ……本間さんに、触りたくなっちゃう……」

「ん……」

抱き寄せられ、そんな風に囁かれたせいで、佳織は甘い声を漏らす。冴子は目を細めて、会議室の時計を見た。

「――会社じゃなかったら押し倒してたな、ふふ」

冴子は髪をかきあげて、立ち上がる。

「佐藤くんにはあたしの方から言っておきます。嫌だって言うかもしれませんけど、いいって言ったら手加減しないですよ。覚悟しておいて下さい」

妖しく微笑むと、冴子は会議室から一人、出て行ったのだった。

*

予想に反して、佳織を望みを叶える日は、すぐにやってきた。

佳織と冴子がその話をした、二日後。日曜日のことだった。
佳織の自宅最寄りから、会社の最寄りを越えて新宿方面に向かう冴子の最寄り駅からすぐ側で待ち合わせをした。

指定されたコンビニの前に佳織が到着した頃には、既に冴子と理央が着いていた。

理央は苦笑しながら頭を軽く下げると、佳織の手を取る。

「僕……よくわかんないけど、いいの」

佳織と理央のやりとりの横で、冴子はサングラスを外した。目を細めて妖しく微笑むと、「あたしは楽しみにしてきたけど」と言う。

「僕は……分かってると思うけど性欲強い」

顔を紅潮させて、真面目に言う理央に、思わず冴子は笑いを堪えられなくなっている。「わ、笑わないでよっ」と冴子に向かって言った。

「だから、食べたことあって、美味しいものは食べたいと思うわけ。だけど、思うのと行動するのは別だよ? 本間さんが嫌ならしない」

「あらやだ、美味しいと思ってくれてたの? 嬉しい~」

佳織の手を取ったままの理央をからかうように、冴子は理央の長めの襟足を撫でた。

「お、思うでしょっ。ほ、本間さんだって、飯塚さんに僕の前で……されたことあるんだから、わかる……でしょ」

「わかるよ」

佳織は静かにそう告げた。

冴子がふっと肩の力を抜いて笑う。
理央は真っ赤な顔で俯いたまま、でも決意めいた小さな声で「わかった、わかったよ……」と繰り返す。
三人でいると、妙に時間の流れがゆっくりになる。昼間だと言うのに、ホテルに向かう不思議な時間。
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