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僕の愛する未亡人
第6章 はじめての愛撫
「飯塚さんが問題なんか起こすわけ……」

「ま……あたしも核心は言いたくなくて、否定も肯定もしてないんですよね」

佳織は冴子の意を組んだ。どこか遠巻きに扱われることを冴子自身が望んでいたのだろう、と。

「男性の後輩が、ストーカーになっちゃったんですよね。それがよりによって、女性エリアマネージャーのお気に入りだった。スタッフを守る立場のはずの彼女に、色目使ったんだろうと言われたわけです。
不当な人事だと当時は思ったけど、本社は色々考えてのことだったようです。あのまま店にいても働きづらかったし。佐藤くんは、事情を知らなかったにせよ、栄転だと思ってくれたし、本間さんもいた。それで十分です」

視線の端で、佳織が冴子を慈しむように見つめているのが見える。
――ああ、自分と同じだ。佳織もまた、冴子を愛おしいと思っている。だが、二人の間にある絆を目にした瞬間、理央の中に小さな独占欲が芽生えた。
上司としての冴子も、隣の席で支えてくれる佳織も、どちらも自分にとって大切な存在だから、余計にややこしい。

「……むぅ……僕、二人とも好きだから……妙にやきもち焼いちゃう」

「は?」

冴子が目を丸くした後、からかうように笑う。
その一方で、理央の佳織も好きだという言葉に、佳織は頬を赤らめ、グラスを持つ手を慌てて下ろした。

「そこに男は入れないじゃないですか~」

「何それ、酔ってるでしょ」

「大好きな二人がいたら酔うでしょ~」

理央はにかっと笑いつつ、手をグーの形にしてローテーブルを軽く叩く。
そしてグラスを持ち、立ち上がると、テーブルを挟んで向かい合っている佳織の横へ座る。

「はぁ……佐藤くんが飲み会に行かない理由、今更ながら納得したわ…」

冴子は乾いてきた髪をかき上げ、ため息まじりに言った。
理央が佳織の右肩に頭をもたれかけてくると、佳織は体をこわばらせ、助けを求めるように冴子を見やった。

「ええ、飯塚さん、僕ってやっぱりだめかなあ?!」

隣の佳織を通り越して、理央は冴子に子供のように問いかけた。

「最悪です。本間さん、蹴とばしていいですよ。奴こそただのヤリチンです。毒牙にかかってほしくない~」

冴子はわざと真顔で言い放つ。その調子がかえっておかしくて、佳織は笑いをこらえきれなくなった。

「本間さんは、僕のこと…嫌…?」
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