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はなびら
第1章 はなびら
西野の報告に矢崎は愕然とした。

「じゃああの、会いたい会いたいっていう矢のような催促は、何だったんだよ」

矢崎が肩を落として呟くと西野は首を横に振った。

「俺がバーで朱里に声をかけた日、朱里の方が “彼氏に嫌われてるみたいだ“ と言ったんです。だから、 ”そもそもその男は朱里ちゃんを彼女だって思ってないんじゃないのか“ って言ったんです。
その会話がきっかけで、『自分たちは付き合ってなかったんだ・・・』って朱里の中で折り合いをつけたみたいですよ。そして、俺に乗り換えた・・・そういうことのようです」

つまり、朱里はまんまと西野の口車に載せられ、なおかつ西野の誘いによろめいたというわけだ。

「とにかく、大事な先輩と関係した女の子とは付き合えない、出会った男と片っ端から寝るような尻の軽い女だとは思わなかった、幻滅だ、そう言って別れました」

矢崎はほっとすると同時に、嫌な汗が背筋を伝い落ちるのを感じた。朱里と別れたいがために、そこまで彼女を傷つけてよかったのだろうか。自分の弱さとずるさに直面し、矢崎は苦笑いするしかなかった。

「朱里、なんて言ってた?」

「その場でしゃがみこんで、肩震わせて泣いてました」

「そうか・・・」

矢崎が顔を曇らせると、西野は重くなった空気を吹き飛ばすように言った。

「でも先輩・・・あれは不可抗力っすよ。まじであの子、とてつもなくエロかったっすよ」
西野がいたずらそうにくすくす笑う。矢崎もつられて笑った。

「そうなんだよ。まじ最高にエロいんだよ」

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