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はなびら
第1章 はなびら
結婚式の二次会の幹事は、西野が引き受けてくれていた。その最終打ち合わせで顔を合わせた際に朱里の話になった。

「じつはまだ朱里から連絡が来るんだ。俺の中では先月の時点でもう終わってるんだが」
朱里からの連絡に疲れていた矢崎は、西野に打ち明けた。

「先輩、結婚の予定があること、朱里に言ってないんですよね」

「言うわけないだろ」

「へえ・・・秘密にして会ってたってことは、先輩、相当朱里にハマったんですね」

「あの子にハマらない男がいるかよ」
思わず本音が出た。

「へえ。興味そそりますね・・じゃあ俺が引き受けますよ」
西野が薄く笑って矢崎を見た。

西野は横からはいりこんで朱里を誘惑するつもりなのだ。どこかほっとすると同時に、嫉妬でかすかに胸が痛む。西野がこれからあの子の体を経験すると思うと、羨ましく思えた。


西野と打ち合わせて、矢崎は朱里をホテルのバーに誘った。
朱里がバーに到着したタイミングで、矢崎がドタキャンの連絡を入れる。そこに西野が、予定の空いてしまった朱里のもとに偶然を装って登場して誘うという算段だった。

計画はうまくいって、予想通り朱里はその日のうちに西野と関係を持った。
所詮そんな女だ。長く付き合う価値もない。矢崎は思った。やっぱり結婚するなら雪子のような身持ちの固い女が理想だ。

西野はその後朱里と二度寝たのちに、彼女に別れを切り出した。これも打ち合わせ通りのシナリオだった。

西野は朱里との関係が切れた翌日、一連のいきさつを矢崎に報らせた。

「───朱里、君が付き合ってるのって矢崎さんだったのか。俺が矢崎さんと先輩後輩の仲だって知ってて、二股かけたのか───って言ったら、朱里は、矢崎さんとは付き合ってるつもりはなかった、って言ってましたよ」
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