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はなびら
第1章 はなびら
西野は力なくうどんを啜りながら言い訳がましく言った。

「なんか口の中が爛れてるんですよ・・・外食ばっかりだからかな」
「遊びまわってるツケが回ったんだな。ビタミン剤でも飲んどけよ」
「先輩はいいっすよね。雪子ちゃんは玄米とか有機野菜とか、相変わらずヘルシー志向なんでしょ」
「ああ。だから家の外だと、どうしてもこういうもんが食いたくなるんだ」
「雪子ちゃんには言わないから安心してくださいよ『雪子ちゃんの知らないところでいろんなもの食べて美味しい思いしてるよ』なんて言いませんから」

「その言い方・・なんか他意を感じるな」
矢崎が苦笑する。

「で、最近いいもの食べました?」
含みのある言葉で西野が矢崎に小声で尋ねた。

「お前とは違うよ」
女遊びばかりしている西野と、堅実な結婚生活を送る矢崎とは、そもそも生活スタイルが違う。

「ただ・・このあいだ朱里から、会いたいって連絡が来た」
矢崎は先日の出来事を西野に打ち明けてみることにした。

「朱里から・・?めんどくさいっすね・・。前のこと蒸し返されたんすか」
西野のそれまでの笑い顔が苦笑に変わる。

「いや、それがさ、そんな感じじゃないんだ。急に俺のこと色々思い出して、顔が見たくなっちゃった、って、付き合ってた頃の感じでさ、言うんだよ」

「付き合ってた頃って先輩・・あの子とは遊びだったじゃないすか」

「ああ。でもな、今にして思うと、もったいないことしたかもな」

「矢崎先輩、今自分が言ってることわかってます?」
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