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忘れたい彼なのに
第1章 忘れたい彼なのに
 私は口先では嫌がっても結局はいつも彼のそうしたセックスを受け入れた。理由は幾つかある。性に対する好奇心も性欲も旺盛な年頃だったし、早く大人になりたい気持ちもあった。初心な同学年の女の子に内心で優越感を感じたくもあった。

 中でも大きな理由が二つあった。ひとつは姉への対抗心、もうひとつは彼に愛されていると思えたことだ。

 中学生のときは才色兼備で手が届かない存在だった姉。しかし地元の進学高に入学してからの姉は変わってしまった。姉は確かに美人で勉強もできたのだが上には上がいる。より広い地域から進学してきた生徒の中に姉よりも美人で頭がよく、性格も良い女子がいた。ただ恋人がいなかった、高嶺の花すぎて男子が誰も告白しようとしないせいで。

 姉はその女子と表面上は仲良くしていたが、どこかで彼女にマウントをとりたかったのだろう。彼氏をたくさん作り、それを彼女に自慢した。告白してくる男子には事欠かなかった。でも高嶺の花さんと違い「穴モテ」だった。それが姉のレベルだった。
 多くの女子をセフレにしているイケメンに処女を捧げると、次々と交際する男子を替えていき、時には二股三股をかけていた。スカート丈がだんだんと短くなり、髪型やメイクも派手になっていった。
 
 姉とは違う高校に進学した私がどうして姉の男女交際に詳しいかというと、姉が私にぺらぺら喋って自慢したからだ。私の彼氏を貶めながら。
 陰でビッチと噂されるようになった姉のようにはなるまい、私は一人の男子と一途に交際しよう。そんな気持ちを抱いていた。

 彼とは何度もセックスしたが、実は会うたびにセックスだけをしていたわけではない。誕生日、クリスマス、お正月、バレンタイン&ホワイトデーにはデートをしてもセックスしなかった。私が生理中も。

 映画を見たりプールに行ったり花火を見に行ったりお祭りにいったりカラオケやゲームセンターで遊んだりもした。試験前には中学高校とも先輩の彼に要領よく点を稼ぐ方法を教えてもらった。

 私が髪を切ったり新しい服を買ったり少しメイクを変えてみたりすると必ず指摘してくれた。似合うと思えば素直に褒めてくれて合いそうなアクセサリーを買ってくれたり、似合わないと思ったときもそれをそのまま口に出して私の怒りを買い、彼が私に似合うと思う服を買ってもらったりした。
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