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混浴露天風呂・痴漢ワニに囲まれて
第4章 邂逅
茉莉子は、3人の部屋の引き戸を軽く手の甲で叩いた。
「はい」
と、征人が返事をして出てきた。
「あ、茉莉子さん」
と、驚く征人。そして、部屋の奥から顔を出した壮介と将星。
「茉莉子さん?お母さんでもいいのよ」
茉莉子が微笑んだ。
「え?いいんですか?」
壮介が訊くと、茉莉子が頷きながら、
「仲居さんから、露天風呂の用意ができたと連絡があったわ。もし、よかったら、夕食前に入ってきたら?」
と、話した。
「そうですね。どうする?」
と、征人が壮介や将星に訊くと、
「お母さんは?」
と、訊く壮介。お母さん…。心地いい言葉。息子たちからはずっと聞けていない言葉。
「あとでいいわ。先に入ってきなさい」
本当の母になったように自然と、そういう言葉が出てきた。壮介も将星、征人も、その声に反応した。
「わかった。入ってくる」
壮介が答えると、
「じゃ、入ってくる」
「お母さん、上がったら呼びに行くね」
と、将星、征人が答えた。
「待っているわ」
茉莉子は自室に戻った。久しぶりの疑似とはいえ、親子の会話。乾ききっていた心が潤うような感覚があった。
『お母さん』という言葉がこんなに恋しいものだったなんて…。茉莉子はその言葉だけで、嬉しかった。息子たちの顔が思い浮かぶ。でも、そのどの顔も笑っていなかった。そう、息子たちの笑っている顔を想い出せなかった。
頬を流れる涙に、気がついた茉莉子。座椅子に座り、座卓に置かれたティーパックを湯呑にセットし、ポットのお湯を入れた。
庭が見える。新緑が徐々に深緑に向かう山々の樹々。
「お母さん」と自分のことを呼んでくれて、素直に応えてくれる3人。何を言っても、「うっせー」「ウザいな」「向こう行けよ」「キモい」と自分を避ける息子たちとは、全然、違う。
でも、あの3人も自分の母親とは上手くいっていないみたい。デブとか、ヒステリックとか、ブスだと彼らは言うけど、それは違うと思った茉莉子。
デブでも、母親は母親。ブスでも、母親は母親。ヒステリック…それは、母親が直したほうがいいのかもしれないけど、息子と真正面から向かい合っているから、子を思う言葉がきつくなるだけかもしれない。
そういえば、私は、そういうことはなかった。息子たちと正面から向かい合った記憶はなかった。
「はい」
と、征人が返事をして出てきた。
「あ、茉莉子さん」
と、驚く征人。そして、部屋の奥から顔を出した壮介と将星。
「茉莉子さん?お母さんでもいいのよ」
茉莉子が微笑んだ。
「え?いいんですか?」
壮介が訊くと、茉莉子が頷きながら、
「仲居さんから、露天風呂の用意ができたと連絡があったわ。もし、よかったら、夕食前に入ってきたら?」
と、話した。
「そうですね。どうする?」
と、征人が壮介や将星に訊くと、
「お母さんは?」
と、訊く壮介。お母さん…。心地いい言葉。息子たちからはずっと聞けていない言葉。
「あとでいいわ。先に入ってきなさい」
本当の母になったように自然と、そういう言葉が出てきた。壮介も将星、征人も、その声に反応した。
「わかった。入ってくる」
壮介が答えると、
「じゃ、入ってくる」
「お母さん、上がったら呼びに行くね」
と、将星、征人が答えた。
「待っているわ」
茉莉子は自室に戻った。久しぶりの疑似とはいえ、親子の会話。乾ききっていた心が潤うような感覚があった。
『お母さん』という言葉がこんなに恋しいものだったなんて…。茉莉子はその言葉だけで、嬉しかった。息子たちの顔が思い浮かぶ。でも、そのどの顔も笑っていなかった。そう、息子たちの笑っている顔を想い出せなかった。
頬を流れる涙に、気がついた茉莉子。座椅子に座り、座卓に置かれたティーパックを湯呑にセットし、ポットのお湯を入れた。
庭が見える。新緑が徐々に深緑に向かう山々の樹々。
「お母さん」と自分のことを呼んでくれて、素直に応えてくれる3人。何を言っても、「うっせー」「ウザいな」「向こう行けよ」「キモい」と自分を避ける息子たちとは、全然、違う。
でも、あの3人も自分の母親とは上手くいっていないみたい。デブとか、ヒステリックとか、ブスだと彼らは言うけど、それは違うと思った茉莉子。
デブでも、母親は母親。ブスでも、母親は母親。ヒステリック…それは、母親が直したほうがいいのかもしれないけど、息子と真正面から向かい合っているから、子を思う言葉がきつくなるだけかもしれない。
そういえば、私は、そういうことはなかった。息子たちと正面から向かい合った記憶はなかった。

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