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助教 沙霧
第13章 視線
 だが、今は違う。誉に「修行」を命じられた今の彼女にとって、他者の視線は、自分を辱め、暴き立てるための「鞭」へと変貌していた。

(……見ないで。そんな純粋な瞳で、私を見ないで)

 心の中で叫びながらも、沙霧の指先はうなじを離れることができない。それどころか、羞恥心が深まるほどに、指の動きは無意識のうちに愛撫のような淫らさを帯びていく。
 タイトなネイビーのシャツの下で、乳首が不埒に硬くなり、ブラジャーのレースを押し戻す。佐藤が「抑圧された情念」と口にするたび、沙霧の股間には重だるい熱が溜まり、椅子の硬い感触が、彼女の秘部を執拗に刺激した。

「瀬川さんは、どう思われますか?」

 不意に、岸田教授から声をかけられた。
 沙霧は一瞬、心臓が止まるかと思った。喉の奥までせり上がっていた熱い吐息を無理やり飲み込み、彼女は努めて冷静な「仮面」を被り直す。
「……ええ。佐藤君の指摘は鋭いと思います。ただ、良基が説く『艶』には、観賞される側が抱く『見られているという意識』の重圧が含まれていることを忘れてはなりません。見られることで、花はより美しく、そしてより残酷に萎れていくのですから」
 
 言葉が、刃となって自分に返ってくる。
 岸田は満足げに頷いたが、壇上の佐藤は、沙霧の言葉に射すくめられたように一瞬、言葉を失った。彼の瞳には、沙霧が纏う峻厳な空気への憧れと、その奥に潜む「何か」を察知したような、戸惑いの色が混じっていた。
 研究会が終わり、学生たちが退出していく中、沙霧は一人、資料を片付ける振りをしながら席に残った。
 指先はまだ、赤く腫れたうなじを離れられない。
 扉が閉まる音が聞こえ、部屋に沈黙が戻ったとき、彼女は思わず深い溜息をついた。
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