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甘い飴と甘い鞭
第6章 GOOD BOY
『×月〇日16時、ホテル・ラグランジュ』

あれから程なくしてラズからの連絡が入った。
おれは、このあいだの夜からまともにジェイと目を合わせられていない。
ジェイと食卓を囲む最中の知らせに、目の前のジェイと携帯端末を何度か見やってから、自然とため息が漏れた。

「うれしそうな顔してるぜ」
「っど、こが」
「……そう思ったから言っただけだよ」

うれしそうな顔なんて、したはずがなかった。
おれは、困惑していたんだ、本当に。
今のこの気持ちのままラズにどんな顔で会えばいいのか、わからなかったから。
だけどジェイに指摘されて初めて、どきっとしたことに気づく。
おれの鼓動がどくどく言ってる。

「おれ、今日夕方出掛けてくる」
「珍しいな、お前が自分から予定言って来るの」
「……大切な用だから」
「……みたいだな」

今日は日曜だ。ジェイも今日は珍しく昼までぐっすりと眠っていて、今し方起きてきたばかりだった。
ジェイが出掛ける素振りはない。
おれが先に告げるより他なかった。
ジェイの顔が見られないまま、夕方を迎えた。
リビングソファで横になっているジェイをそのままに、おれは背中越し、行ってきますの声を掛けて家を出た。
眠っていたのか、ジェイからの返事はなかった。



何となく、心が逸る。
こんなことがずっと続くはずはない。
今日が最後かもしれない。
だとしたらおれは今日、ラズに何て言えばいいんだろう?
何を伝えればいいんだろう?
そんなことを考えながら隣町に向かう地下鉄に乗り込んだ。
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