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甘い飴と甘い鞭
第6章 GOOD BOY
「ラズ……」
「こんな遊びは最後にしろ、シオン。約束してくれ」

シャワーを浴びて戻ったラズは、携帯端末を眺めながら冷ややかに言った。

「いやだよ、おれ。折角、また……」
「俺には時間がない」
「……ラズ」

おれは情緒がどうにかなってしまいそうだった。
また置いて行かれる。
おれの頬は気づけばひたひたに濡れていた。声もなく泣いていた。
そんなおれの頬を、ラズの手が拭う。
おれは、シャツを着込んだラズの胸にしがみつく。

「お前はもう自由なんだ、シオン」
「どこがだよ、全然自由じゃないよっ、自由なんて……要らない……!」

それがラズとの別れを意味するのなら、何の意味もない。
ラズのシャツがおれの涙で濡れていく。おれはそれが居た堪れなくて泣く泣く、手を放して床に這いつくばった。
ラズの手が、優しくおれの髪を撫でて背を叩く。

「俺に拘るな。お前を大事にしてくれる人間は、もう居るはずだろう」
「……ッ、ちがう……!」

ラズはそれでいいのかもしれなくても、おれの心は、おれの本能はもう戻れない。
そう、言葉にできなくて、おれは唇を噛んだ。
ラズを困らせたくなかったから。ラズに嫌われたくなかったから。

「すまない、シオン。時間だ」

ラズが背広を拾い上げて言う。
おれは、顔を上げることができなかった。

「さよならは言わない。だけど、これが最後だ」
「…………ラズ、ラズ」

部屋の扉が開く音がする。
ゆっくりと、閉まる音がするまで、おれは結局顔を上げられなかった。
一人になった部屋で、おれは泣き続けた。
もう、きっと二度と会えない。会ってくれない。
それなのにおれは、この気持ちを捨てられずに生きていかなければならないなんて、ずる過ぎる。
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