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『春のにほひ』
第1章 沈丁花の咲く頃…
 4

『あの月が、あれぐらいの高さになってからかなぁ…』
 これまで、そんな曖昧な時間指定の誘いはもちろん初めてで、それがいつなのか、迷ってしまう。

「駿、さっき、角の家の前に居たわよねぇ」
「えっ」
 母親の急な問いかけにドキンとしてしまう。

「さっき、チラっと見かけたような…」
 母親は、仕事帰りの運転の車中から見かけたそうであった。

「う、うん、ほら、梅が咲いてたからつい立ち止まって見てたんだわ」
「あぁあの梅ね、早いわよねぇ」
 どうやら母親は、家主である千里さんの存在には気付いていないみたい…
 それに色々訊かれたら面倒なので、敢えて黙っていた。

「あ、そういえば…」
 そこで僕は、ふと浮かんだ疑問を問うてみる。

「あぁ、あの家ね…」
 すると母親は、僕の疑問の答えを知っているらしく、スラスラと話し始めてきた。

「あの家はさぁ、どうやらさぁ…………」

…………以前は年配の夫婦が住んでいたのだが、亡くなって売りに出て、どこかの大きな会社の社長が買ったそうで…………

「でね、どうやら、その社長の愛人さんが住んでいるんだってぇ…」
「えっ、あ、愛人が…」
「うん、そうなんだってぇ、○○さんが言ってたのよ」
 と、ご近所CIAの名高い主婦の名前を挙げてきた。
 だが、その情報網はバカに出来ない。

「へぇ、そうなんだぁ…」
 僕は、そんな母親の噂話しにドキドキしながら、内心、昂ぶりを感じていたのだ。

 それは…
『愛人』という淫靡な響きの言葉が、千里さんの艶を一層濃く見せてきたから。
 そして…
 そんな彼女に誘われた、という、大人の、見知らぬ夜の匂いに…
 妖しい未知の魅惑さを感じ、心を騒つかせてきていた。

『今夜はさぁ、月が細いから…寂しいのよ…』
 という、不思議な誘い…
 確かに今夜の月は、刃の様に細くて鋭い。

 そして…
『この沈丁花の甘さは夜になるとね…
 もっと、むせるように匂い立つのよ…』
 という、さっきの言葉に…
 大人の夜という妖しい匂いを感じ、揺らいできていた。
 
 とにかく母親には黙っておこう…

 そして…
 いつくらいに訪れればいいのか?
 いや、誘われた本当の意味は?
 本当にお酒の付き合いなのか?
 と、心の水面が激しく波打ち、揺れてくる。

『月のあの高さ…』

 何時なんだろう?………




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