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影を背負った愛~足りない愛を、君に
第37章 父の日の余韻と、意地悪な愛~二人の甘い月曜日~ 午前編
彩香が壁に額をくっつけたまま、
スマホを両手でぎゅっと握っていると、健治さんの低い声が少し柔らかくなった。

『……さては、昨日のことを思い出して顔を赤らめてたんだろう?』

「っ……!」

彩香の肩がびくりと跳ねた。健治さんは電話越しに小さく笑い、意地悪さと包容力が同居した、いつもの渋い声で続けた。

『俺もだ。昨日のこと、ずっと思い出してたぞ。
お前のアニメの棚とか……お風呂で「お父さん」って呼んでくれたこととか……全部。
彩香のことを、全部知れて嬉しかった。
包み隠さず話してくれて……本当にありがとうな』

優しい言葉の中に、からかうような響きが混ざっている。

彩香は耳まで真っ赤になり、言葉が出てこなくなった。

スマホを持つ手が震え、唇をぎゅっと噛んでその場に立ち尽くす。
沈黙が数秒続いた後、彩香はようやく震える小さな声で絞り出した。

「健治さん……ありがとうございます……
私も健治さんの過去の事知れてよかったです……」

声が上ずって、ほとんど息みたいになっていた。健治さんは低く満足げに笑った。

『受け入れてくれて嬉しかったぞ。そしてまた恥ずかしがってたんだろう?
ほんと素直で可愛いな、彩香は』

「もう……健治さん……」

『午後の会議も楽しみにしているからな。
お前の赤い顔、ちゃんと見せてもらうぞ』

彩香の頭がカァッと熱くなった。すると健治さんの声が、さらに低く甘く変わる。

『……今日、仕事終わったら俺の家に来てもいいんだぞ。
たっぷり可愛がってやるから』

その言葉に、昨夜の激しい記憶が一気に蘇り、彩香は限界を迎えた。

「……け、健治さん……もう、限界です……!
では、また会議で……!」

慌ててそう言い、彩香は返事を待たずに通話を切った。
スマホを胸に強く押し当て、廊下の壁に背中を預けてその場にしゃがみ込んだ。

「……もう……意地悪……」

顔を両手で覆い、耳の先まで真っ赤にしながら小さく身をよじる。
心臓が激しく鳴り、昨夜の健治さんの熱い腕や声が頭の中で繰り返されていた。

(会議……どうしよう……顔、絶対に赤くなっちゃう……)

彩香はしばらくその場で深呼吸を繰り返し、なんとか平静を装って企画部フロアに戻った。
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