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影を背負った愛~足りない愛を、君に
第39章 父の日の余韻と、意地悪な愛~二人の甘い月曜日~ 夜編①
その後も彩香は見学ルームのガラス窓に額を軽く押し当て、
息を潜めてプールを見つめていた。

25mコースを力強く泳ぐ健治さんの姿が、照明に照らされてくっきりと浮かび上がる。
逞しい肩幅、厚みのある胸板、水を切るたびに浮き出る広い背中と、
男らしい腰回りのライン——。

水しぶきを上げてターンする瞬間、口ひげのある精悍な横顔がはっきり見えて、彩香の胸がどくんと大きく跳ねた。

(健治さんやっぱりかっこいい・・。)

じーっと見つめすぎていた。

健治さんがターンした直後、ふと視線を上げて見学ルームの方を見た。

一瞬の間を置いて、彼の鋭い眼差しが彩香を捉える。

口ひげの下で唇がわずかに緩み、
健治さんは水の中で片手を上げて、はっきりとした動作で手を振った。

彩香の目が大きく見開かれた。

健治さんは泳ぎを止め、プールサイドに手をかけて体を浮かせるようにしながら、
こちらに向かって口を動かした。


唇の動きで、はっきりとわかる。

「彩香。今行く」


「っ……!?」

彩香の顔が一瞬で真っ赤に染まった。

頭の中が真っ白になり、慌てて後ずさろうとした瞬間——
ガタン!

足がもつれた。

慌てすぎて自分の足を踏んづけ、バランスを崩してよろよろと後退する。

見学ルームの椅子に尻をぶつけてしまい、危うく転びそうになる。

「や……だ……!」

心臓が爆発しそうな勢いで鳴りながら、彩香は必死に出口に向かって走り出した。

しかし足が震えて思うように動かず、
廊下をふらふらと蛇行するような逃げ方になってしまう。

エレベーターは遠い。一階出入り口の階段を降りるしかない。

ドタドタドタ……!

階段を駆け下りる音が響く。

後ろから健治さんの濡れた足音が、どんどん近づいてくるのがわかった。

「彩香、待て」

低く、でもはっきりとした声。
意地悪く、しかし甘く響くあの声。

「ひゃ……!」

彩香は一階出入り口に降りたところでまた足をもつれさせ、壁に手をついてよろけた。

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