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万華のむつごと
第2章 高まる夏空
健太は、二年でトップクラスの成績の優等生で、端正な顔立ちの持ち主。

優しい物腰で、女子生徒の人気の的だった。
学校に行く理由の大半は、健太に会えるから、といっても大げさではないくらい、その頃の透子は健太に心酔していた。


「やばっ、あたしってバカ。先に言っちゃったよ」

志保は目を丸くしたあと、ふざけて自分の頬をぱちんと叩いた。

「今日兄ちゃん、夏祭りで透子に告白する気らしいんだよね。でもさ、フラれるんじゃないかって心配でさ。つい透子本人に先に聞いちゃったよ。兄ちゃんには内緒にしてね、あたしがばらしたこと」

透子は激しく脈打つ鼓動を感じながら、ゆるゆると首を振った。突然の妹づての告白に、顔が真っ赤になるのをおさえられず頬を手で挟んだ。

「でもあいつ悪い男じゃないよ。おとなしいけど、優しいし、本当は強いところもある。初めての男にしてはいいと思う。透子ってさ、ほんとは、いろいろ知ってるんでしょ?このまえ遊びに行ったら、四十八手、とかいうの見てたじゃん?」

透子はさらに赤くなった。日本舞踊の師匠をしている祖母が持っていた菱川師宣の「恋のむつごと四十八手」を盗み読みしていたのを、志保は気づいていたのだ。

「あたしもね、兄貴の最初の相手が透子だったら、すごくいいなって思うんだよ」

志保は言って、透子の反応を横目で見ている。
その流し目がおどろくほど妖艶で、透子は突然大人びた顔になった志保に、目が釘付けになってしまったほどだった。
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