この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
パートタイマーの淫乱人妻・美香~主婦の仮面を脱ぐ午後
第7章 熟れた体~遊びのつもりよ
タクシーがゆるやかな坂を上りきり、家の前で静かに止まった。
自宅を取り囲む夜の空気は都会のざわめきからふわりと切り離されていて、驚くほど澄んでいる。古い家の石垣と新しい住宅が不思議な調和で並ぶこの町は、夜になると、ただ風と虫の気配だけが満ちる場所になる。
私の家は清滝川の傍に建つ二階建てで、庭の隅には古い楠の木が一本、静かに枝を伸ばしていた。黒い大きな門扉をくぐると、靴の底で砂利がさらさらと小さな音を立てる。昼間ならリビングの大きな窓から生駒のやわらかな山影が見えるけれど、今はただ、深い藍色の闇が広がっているだけだった。
玄関を上がると、私はあちこちのスイッチを押して部屋を無駄に明るくすることはしなかった。ただリビングの片隅にある、背の低いフロアスタンドの間接照明だけを灯した。オレンジ色の控えめな光が、磨かれたフローリングの上に奇妙に引き伸ばされた影を落とす。
夫の書斎のドアを、私はあえて半分ほど開け放ったままにしておいた。
ある種の部屋は、持ち主が長い不在に入ると、驚くほど急速にその個性を失ってしまう。かつて夫が支配していたその空間は、すでに彼という人間の輪郭をきれいに手放し始めていた。
そこにはかつて漂っていた夫特有の皮脂の匂いも残っていない。鼻腔をくすぐるのは、冷えた埃と、時間が硬化していくときに出す乾いた空気の気配だけだった。デスクの向こうの白い壁紙に、夫がいつの間にか残した薄い椅子の擦れ跡と、小さなコーヒーの染みだけが、そこに誰かが確かに存在していたという貧弱な証拠物件のように残されている。
本棚には、難解な医学書や臨床心理学のハードカバーが几帳面な背表紙を揃えて沈黙を守っていた。
かつては理知と静謐さに満ちていたその四角い箱のような部屋が、今夜、まったく別の生々しい熱と、湿った肉体の匂いによって塗り替えられることになる。それはとても奇妙な種類の予感だった。夫の不在という真空地帯に、見知らぬ若い男の体温を注ぎ込むこと。その静かで冷ややかな背徳の感触が、まるで上質なシルクの裏地のように、私の皮膚の表面をひそやかに、そして確実に粟立たせていた。
自宅を取り囲む夜の空気は都会のざわめきからふわりと切り離されていて、驚くほど澄んでいる。古い家の石垣と新しい住宅が不思議な調和で並ぶこの町は、夜になると、ただ風と虫の気配だけが満ちる場所になる。
私の家は清滝川の傍に建つ二階建てで、庭の隅には古い楠の木が一本、静かに枝を伸ばしていた。黒い大きな門扉をくぐると、靴の底で砂利がさらさらと小さな音を立てる。昼間ならリビングの大きな窓から生駒のやわらかな山影が見えるけれど、今はただ、深い藍色の闇が広がっているだけだった。
玄関を上がると、私はあちこちのスイッチを押して部屋を無駄に明るくすることはしなかった。ただリビングの片隅にある、背の低いフロアスタンドの間接照明だけを灯した。オレンジ色の控えめな光が、磨かれたフローリングの上に奇妙に引き伸ばされた影を落とす。
夫の書斎のドアを、私はあえて半分ほど開け放ったままにしておいた。
ある種の部屋は、持ち主が長い不在に入ると、驚くほど急速にその個性を失ってしまう。かつて夫が支配していたその空間は、すでに彼という人間の輪郭をきれいに手放し始めていた。
そこにはかつて漂っていた夫特有の皮脂の匂いも残っていない。鼻腔をくすぐるのは、冷えた埃と、時間が硬化していくときに出す乾いた空気の気配だけだった。デスクの向こうの白い壁紙に、夫がいつの間にか残した薄い椅子の擦れ跡と、小さなコーヒーの染みだけが、そこに誰かが確かに存在していたという貧弱な証拠物件のように残されている。
本棚には、難解な医学書や臨床心理学のハードカバーが几帳面な背表紙を揃えて沈黙を守っていた。
かつては理知と静謐さに満ちていたその四角い箱のような部屋が、今夜、まったく別の生々しい熱と、湿った肉体の匂いによって塗り替えられることになる。それはとても奇妙な種類の予感だった。夫の不在という真空地帯に、見知らぬ若い男の体温を注ぎ込むこと。その静かで冷ややかな背徳の感触が、まるで上質なシルクの裏地のように、私の皮膚の表面をひそやかに、そして確実に粟立たせていた。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


