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『帰り花の夜に』~義母の静謐なる背徳
第8章 義息~超えてはいけない境界線(7)
ベッドの硬いスプリングを軋ませて彼が隣に腰を下ろした。私はバッグからレモン風味のペリエを取り出し、金属のキャップを捻った。シュッという密やかな気圧の変化とともに、喉を冷たく鋭い刺激が通り抜けていく。
「私、少し緊張してるのかしら」
「どうでしょうね」と彼は抑揚のない声で言い、私の細い手首を掴んで自分の方へと引き寄せた。
短くなった私の無防備なうなじに、彼の温かい唇が触れる。私は彼の鎖骨のくぼみに顔を埋めた。若々しく丸く浮き出た喉仏、清潔な合成洗剤と微かなオリーブ石鹸の匂い。彼の器用な指が私の麻のシャツの貝ボタンを上から順に外していき、黒いレースのワイヤーブラジャーが白日のもとに晒される。スカートのサイドジッパーが引き下げられ、布地が衣擦れの音とともに絨毯の上へと崩れ落ちた。
彼もまたシャツのボタンを外し、革のベルトを解いた。無駄な肉の一片も見当たらない、研ぎ澄まされた若い肉体。それを見るたび、私はどうしても夫の背中を思い出さずにはいられないのだ。年月の重みと怠惰を背負い、茶色いシミが星座のように点々と浮かんでいた夫の背中。
私は道徳的に損なわれた女だから、本当はそういうくたびれた、時間の堆積した背中にこそ許しを見出すべきなのだ。それなのに、目の前にある若く張り詰めた筋肉の滑らかさから、どうしても目を逸らすことができない。
「先にシャワーを浴びさせて」と私はかすれた声で言った。
「たくさん歩いたから、身体が少し汗ばんでいるの」
「お湯を張っておきますね」
彼はバスルームへ向かい、クロームメッキの蛇口を捻った。曇りガラスの向こうで白い湯気が立ち上り、規則正しい水音が密閉された部屋を満たしていく。
彼は戻ってくると、ベッドサイドに立つ私の背後に回り、背骨のくぼみを親指の腹でゆっくりとなぞり下ろした。
「汗、かいてるでしょう。昔から夏という季節はあまり得意じゃないの」
「今度、みんなで海にでも行きましょうか」
「私、少し緊張してるのかしら」
「どうでしょうね」と彼は抑揚のない声で言い、私の細い手首を掴んで自分の方へと引き寄せた。
短くなった私の無防備なうなじに、彼の温かい唇が触れる。私は彼の鎖骨のくぼみに顔を埋めた。若々しく丸く浮き出た喉仏、清潔な合成洗剤と微かなオリーブ石鹸の匂い。彼の器用な指が私の麻のシャツの貝ボタンを上から順に外していき、黒いレースのワイヤーブラジャーが白日のもとに晒される。スカートのサイドジッパーが引き下げられ、布地が衣擦れの音とともに絨毯の上へと崩れ落ちた。
彼もまたシャツのボタンを外し、革のベルトを解いた。無駄な肉の一片も見当たらない、研ぎ澄まされた若い肉体。それを見るたび、私はどうしても夫の背中を思い出さずにはいられないのだ。年月の重みと怠惰を背負い、茶色いシミが星座のように点々と浮かんでいた夫の背中。
私は道徳的に損なわれた女だから、本当はそういうくたびれた、時間の堆積した背中にこそ許しを見出すべきなのだ。それなのに、目の前にある若く張り詰めた筋肉の滑らかさから、どうしても目を逸らすことができない。
「先にシャワーを浴びさせて」と私はかすれた声で言った。
「たくさん歩いたから、身体が少し汗ばんでいるの」
「お湯を張っておきますね」
彼はバスルームへ向かい、クロームメッキの蛇口を捻った。曇りガラスの向こうで白い湯気が立ち上り、規則正しい水音が密閉された部屋を満たしていく。
彼は戻ってくると、ベッドサイドに立つ私の背後に回り、背骨のくぼみを親指の腹でゆっくりとなぞり下ろした。
「汗、かいてるでしょう。昔から夏という季節はあまり得意じゃないの」
「今度、みんなで海にでも行きましょうか」

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